父親・母親に同等の休暇取得の権利を
―出産休暇から両親休暇への改正案

カテゴリー:多様な働き方勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2011年5月

政府は5月16日に開始したModern Workplaces(現代的な職場)と題するコンサルテーションおいて、子供を持つ被用者のための休暇制度の拡充案を示した。2015年4月を目途に、母親の休暇取得に重点を置く従来の制度を改め、産後一定期間以降は両親に同等の権利を付与するほか、取得期間についても柔軟性を高めるなどの方策を通じて、父親の休暇取得の促進をはかりたい意向だ。

既にこの4月には、母親に付与されている1年間の出産休暇(maternity leave)のうち6カ月分を父親が取得できるとの制度改正がなされたところだが、今回の改正案はこれをさらに推し進めるものだ。母性保護のため、出産から18週間については母親に休暇が付与され、まとまった期間での取得が義務付けられるが(この間、父親には従来通り2週間の手当付き休暇(paternity leave)を付与)、これ以降は両親休暇(parental leave)として、父親・母親ともに同等の休暇取得の権利を与える。19~22週目の4週間は、両親のそれぞれに取得の権利を付与する手当付き休暇が新たに設けられ(注1)、続く17週間(23~39週目)の手当付き休暇、13週間(40~52週目)の手当てのない休暇を、両親で分け合って取得することができる。また、雇用主との合意を前提として、断続的な休暇取得も可能となる。一連の制度改正により、父親には新たに4週間、固有の手当付き休暇の取得権が認められ、母親と同時に休暇を取得することが可能となるほか、従来の26週間の上限を越えて最長で30週、母親に代わり休暇を取得することが可能となる。さらに、昨年3月の育児休暇に関するEU指令の改正をうけて、2年目以降の両親休暇(手当なし)を現行の13週から18週に延長、また取得を認める子供の年齢の上限についても引き上げを検討する(現在の5歳までを、8・12・16・18歳のいずれかに変更)。

また併せて、柔軟な働き方を申請する権利の適用範囲を拡大する方針が示されている。現在は17歳未満の子供、18歳未満の障害児を持つ親の育児や、一部の介護者などに限定されているが、2013年からは原則として全ての被用者に認めるというもの。ただし、勤続26週以降という現在の資格要件は維持される。加えて、現行制度では、介護者による柔軟な働き方の申請について12カ月間で1度のみとの制限が設けられているが、一時的な介護ニーズなどに対応するため、複数回の申請を可能とすることが検討される。

コンサルテーション文書にはこのほか、病気等を理由に年次休暇を取得できなかった場合に繰越を認める法改正や、均等賃金違反の企業に対する賃金監査の義務化などを実施する案が盛り込まれている。政府はこれらの制度改正に関して、コンサルテーションを通じてその進捗や実施内容に関する国民の理解促進をはかるとともに、年次休暇については来年度の実施、またそれ以外については今期議会中(2014年度まで)の早い時期に法案を作成したいとしている。

参考資料

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