週末・夜間に働く者が増加、補償も「代休」から「金銭」へ

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2011年12月

標準労働時間(9時~17時)以外の土日や夜間に働く人が1990年代半ばから増え続けている。このうち、土曜勤務に定期的につく労働者は2009年には4割を占め、1995年に比べ6ポイントも高かった。残業の補償方法も変化している。「代休取得」が1984年の4割弱から1割近くまで減り、代わりに「代休取得と金銭補償との混合」、「金銭補償」が増えている。ハンスベックラー財団の報告で明らかになった。

グローバル化や店舗営業時間の延長が影響

この調査は、リューネブルク大学のドミニク・ハングルベルガー教授が社会経済パネル(SOEP)(注1)のデータを基に分析した結果をまとめたものである。同教授は、標準勤務時間(9時から17時)外に働く労働者が増加した背景には、グローバル化など競争圧力の高まりによる「非正規労働者の勤務時間の拡大」や「店舗の営業時間の延長」が影響していると見る。

図1に示す標準勤務時間外に働く労働者の割合の推移を詳しく見ると;

  • 「土曜勤務」:2009年には全労働者の39.4%を占めており、1995年から約6ポイント増加した。
  • 「夜間勤務」:19時から22時に働く者を指す。29.1%(2009年)の割合となっており、やはり増加が続いている。
  • 「日曜勤務」:絶対的な数値レベルは低いが、「土曜勤務」と非常によく似た傾向が認められる。1995年以降、「少なくとも月に1度は日曜に働く」と回答した労働者の割合は増加しており、2009年には5ポイント高い21.5%に達した。
  • 「深夜勤務」:22時から早朝6時に働く者を指す。2005年まで増加が見られたが、それ以降は横ばいとなっており、労働者全体に占める割合は12.6%(2009年)となっている。

 

図1.標準勤務時間外に働く労働者の割合
(1995年-2009年、対全労働者比)

図1.標準勤務時間外に働く労働者の割合(1995年-2009年、対全労働者比)

出所:ハンスベックラー財団2011

なお、図1には示されていないが、特にパートタイム労働者と僅少労働者の間で、週末や夜間に働く者が大幅に増加している。しかし、全体を見ると(パートタイム労働者や僅少労働者の間での増加が顕著とはいえ)、フルタイム労働者の割合が最も高い。現在、パートタイム労働者がフルタイム労働者の割合より多いのは「土曜勤務」のみである。

性・業種別で勤務時間異なる

調査ではまた、標準勤務時間外に働く者は概して男性が多いことも判明した。特に男女差が明確なのは「夜間勤務」や「深夜勤務」で、深夜に働く女性の割合は男性の半分程度であった。なお、「土曜勤務」と「日曜勤務」では男女差は非常に小さく、これらの週末勤務における2009年の男女差は約2ポイントのみだった。

業種別に見ると、標準時間以外で働く者の割合が高いのは主に飲食業などのサービス業で、夜間や深夜に働かなければならない者が多いのは運輸業と工業だった。このほか、医療・福祉の分野でも9時から17時以外の時間に働くことが多かった。対して、平日の昼間に働いているのは、建設業や銀行などの業種であった。

補償、「混合型」と「金銭補償」が7割に

今回の調査では、SOEPを基に労働時間帯だけでなく超過勤務に対する補償方法の変化についても分析が行われた。1984年と2008年を比較すると、超過勤務の補償は、「代休取得も金銭補償も可能な混合型」や、「金銭補償」の割合が増加し、全体の7割を占めていることが判明した(図2)。
 これと比例するように、超過勤務の補償として「代休を取得する」という割合は大幅に減少し(36.1%→10.5%)「超過勤務に対する補償がない」とする割合も減少した(24.7%→19.4%)。

図2.超過勤務の補償
(1984年・2008年比較)

図2.超過勤務の補償(1984年・2008年比較)

出所:ハンスベックラー財団2011

ハングルベルガー教授は今回の調査について、育児・介護の有無やフルタイムかパートタイムかの属性によっても異なるが、労働時間と労働者の満足度の関係については、「労働者の労働時間に関する自己決定権の有無」が重要な要素だと結論づけている。

参考資料

  • Böcklerimpuls 14/2011、Dominik Hanglberger: Arbeitszeiten außerhalb der Normalarbeitszeit nehmen weiter zu, in: Informationsdienst Soziale Indikatoren, Ausgabe 46, Juli 2011

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