積極的連帯所得手当(RSA)受給者が増加
政府報告書によると、生活保護に相当する積極的連帯手当(RSA)の受給者が増加していることが明らかになった。2010年6月末時点におけるRSA受給者数はおよそ177万世帯に上り、前年同時期と比べて20%近く増加している。
日本の生活保護制度に相当する積極的連帯手当(RSA :revenu de solidarité active) は、社会参入最低所得手当(RMI:Revenu Minimum d'Insertion)を中心とした社会扶助制度を改編したもので、2009年6月1日からフランス全土で実施されている。
前身となる社会参入最低所得手当(RMI)は、著しく困難な状況にある者に最低限の生活を保障するとともに、社会参入(主に就業)を促進し、社会・経済的な自立を促す制度として1988年に創設された(注1)。しかしこのRMIは、受給者が就職した場合就労所得のすべてが手当てから減額される制度であったため、就職したが故に世帯収入が減少してしまうことがあり、働かずにRMIを受給し続けるケースが増加、受給者の社会復帰率の低下が問題となっていた。そこで働かずに生活保護を受けるよりも、少しでも働いた方が収入増につながる制度、すなわちアクティベーション型の制度として登場したのがRSA。RSAの目的は「貧困と闘うために、受給者の最低限の生活手段を保障し、職に就くあるいは復職することを奨励し、受給者の社会参入を手助けする」こととされ、RMIで受給対象とされなかった低所得者についても支給対象に加えるとともに、就職した後も手当の支給を継続するなど、低所得就業者支援を拡大した。RSAは、社会参入最低所得手当(RMI)または単親手当(API)の流れをくむ基礎RSAと、就業しているが就労所得が非常に低い者に支給される就業RSAで構成される。なお、受給者は基礎RSAと就業RSAを同時に受給することが可能である。
政府報告書(注2)によると、全国家族手当金庫(CNAF)を通じて支給されるRSAは2010年6月30日現在、フランス本土で176万6000世帯。このうち133万2000世帯が基礎RSAを受給し、43万4000世帯が就業RSAを受給している(表1)。基礎RSAのうち、加算基礎RSAは、扶養する子が既にいるか妊娠中である単親者に支給されるAPIに代わるものである。2009年6月末以降、とりわけ、全く新しい給付である就業RSAの立ち上げ時増強の影響を受けて、RSA受給者は全体として約20%増加した。一方、基礎RSAの受給者も1年間で10 %増と明らかな増加を見せている。
また、RSAの受給者のうち全体の35%(2010年6月現在)を占める25歳から34歳の年齢区分における受給者数の増加が顕著になっており、この年齢層が景気変動の影響を最も受けやすいことを示している。
2009年6月 | 2009年9月 | 2009年12月 | 2010年3月 | 2010年6月 | |
加算無しの基礎RSA | 1009 | 1055 | 1100 | 1127 | 1142 |
加算ありの基礎RSA | 189 | 199 | 193 | 193 | 190 |
基礎RSA合計 | 1198 | 1254 | 1293 | 1319 | 1332 |
就業RSA | 280 | 366 | 404 | 418 | 434 |
RSA合計 | 1478 | 1620 | 1697 | 1738 | 1766 |
範囲:フランス本土
出所:CNAF
注
- 労働政策研究・研修機構(2010)JILPT資料シリーズ『ドイツ・フランス・イギリスの失業扶助制度に関する調査』第2章フランスを参照。
- DREES N°744 novembre, 2010
参考
- DREES報告書、海外委託調査員
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