景気回復後の政策方針めぐり議論が難航

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2010年4月

欧州統計局(Eurostat)が3月に発表したEU27カ国の2010年2月の失業率は、前月から0.1ポイント増の9.6%となった(対前年同期比では1.3ポイント増)。若年層(25歳未満)の失業率はEU平均で20.6%(対前月比0.1ポイント、対前年同期比2.2ポイントの増)で、全体の失業率が高いラトヴィア(21.7%)やスペイン(19%)では、こうした若年層の失業率は4割を超えている。失業者数は対前月比で13万人増の2302万人となり、前年同月から314万人増加した。なお、同月に発表された2009年第4四半期のGDP成長率は0.1%で、前期に続いてプラス成長となったものの、09年通年の成長率はマイナス4.2%。欧州委員会は、2010年の成長率を0.7%と予測、雇用については当面回復は期待できないとの見方を示している。

不況対策による加盟各国の財政悪化への懸念から、EUでは昨年来、出口戦略をめぐる議論が行われている。加盟国首脳からなる欧州理事会は昨年12月の会合で、景気回復が確実になった後は、経済危機への対応のための例外的な景気対策から脱却し、財政を健全化するとの方針で合意している。しかし、経済・雇用状況は加盟各国で大きく異なり、歩調を合わせにくい状況にある。

さらに現在、経済成長と雇用に関する10年間の目標と政策方針として2000年に導入された「リスボン戦略」が2010年に終了することから、これに代わる新たな戦略である「Europe 2020」の内容をめぐって議論が行われているところだ。欧州委員会が3月3日に発表した案は、「知的、持続可能かつ包摂的な成長」をスローガンに、域内の20~64歳層の就業率を従来の目標値である70%から75%に引き上げるほか、貧困層を2000万人(25%)削減すること、学校教育中退者を10%未満に抑えるとともに若年層の高等教育資格取得者を40%以上とすること、GDPの3%を研究開発投資に充てること、温室効果ガスの20%削減ならびに再生可能エネルギー利用率・エネルギー効率を20%引き上げることなどを目標として掲げている。しかし、3月25-26両日に開催された欧州理事会は、教育水準及び貧困層削減に関する数値目標の設定などで合意に至らず、議論は6月の理事会に持込されることとなった。

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