フィヨン新内閣が発足
―労働・雇用・厚生省を新設
公的年金制度改革法が可決され、これまでの議論に一応の終止符が打たれたことを見届けたサルコジ大統領は11月14日、フィヨン首相の留任を決めた上で大規模な内閣改造を実施した。今回の組閣で大臣の数が減らされた中、2002年から独立した省として存続していた厚生省が労働省に合併された。
今回の改造では、オルトフー氏ら与党国民運動連合(UMP)の要人がそろって重要ポストを固めた。2012年の次期大統領選を見据えた「選挙対策内閣」との見方が強い。依然として経済危機の影響が色濃く残る中、新内閣の舵を取るフィヨン首相の前途は多難。財政赤字の削減、失業率改善など、経済的な課題を最優先とした上で改革を進めると断言した。中でも、経済危機から脱するためには「雇用が最重要」と述べ、そのための方策の一つとして学業訓練交互契約(Contrat d'alternance)を倍増させたいなどとしている。しかし今回の公的年金改革については、半ば強引とも言える手法で議論を封じ結論を急いだため、野党および労働組合は政府のやり方に対しての反発を強めている。今後これら反対勢力と再び対話するための糸口を見つけなければならず、これについては新大臣の手腕が問われそうだ。新たに労働・雇用・厚生相に就任したのは疾病保険や医師不足などの諸問題に詳しいとされるグザヴィエ・ベルトラン氏。年金改革を断行したものの、大手化粧品会社創業者一族からの不正献金疑惑が批判されていたヴォルト氏は退任した。医療問題に強いベルトラン新大臣の就任で医師組合などは歓迎している模様だが、労働問題が山積する中、医療関連の問題の解決は困難だろうと見られている。
また評判の悪かったナショナル・アイデンティティ省は消滅。一方、差別的な発言をしたとしてオルトフ-元移民相が有罪判決を受けた中、移民省は内務省に吸収される形で残った。これについては移民問題研究者パトリック・ヴェイル氏が「移民を担当する部門は従来、外務省や社会問題省にあった。移民フローをコントロールしなければならないとする警察的な視点のみで、移民問題を扱ってはならない」と警鐘を鳴らしている。移民史の専門家ジェラール・ノワリエル氏もそうした危険性を指摘しており、わずか3年間で「外国出自のフランス人」といった概念を導入した移民省の及ぼした被害の深刻さについて言及した。こうした指摘がある一方で政府は、従来の移民政策を継続するとしており、フランス国籍剥奪などの条項を盛り込んだ移民法を1月に元老院で通過させるための準備が進められている。
新内閣メンバー
(2010年11月14日)
- 首相: フランソワ・フィヨン
- 国務大臣、国防・退役軍人大臣:アラン・ジュペ
- 国務大臣、外務・ヨーロッパ問題大臣:ミシェル・アリオ=マリー
- エコロジー・持続可能開発・運輸・住宅大臣:ナタリー・コシウスコ=モリゼ
- 国璽尚書、司法・自由大臣:ミシェル・メルシエ
- 内務・海外県・海外領土・地方自治体・移民大臣:ブリス・オルトフー
- 経済・財政・産業大臣:クリスティーヌ・ラガルド
- 労働・雇用・厚生大臣:グザヴィエ・ベルトラン
- 国民教育・青少年・市民生活大臣:リュック・シャテル
- 予算・公会計・公務員・国家改革大臣、政府報道官:フランソワ・バロワン
- 高等教育・研究大臣:ヴァレリー・ペクレス
- 農業・食品・漁業・農村地域・国土整備大臣:ブリュノ・ル・メール
- 文化・通信大臣:フレデリック・ミッテラン
- 連帯・社会的団結大臣:ロズリーヌ・バシュロ=ナルカン
- 都市大臣:モーリス・ルロワ
- スポーツ大臣:シャンタル・ジュアノ
担当大臣
(Ministre auprès du ministre)
- 首相付国会関係担当大臣:パトリック・オリエ
- 経済・財政・産業大臣付産業・エネルギー・デジタル経済担当大臣:エリック・ベソン
- 国務大臣・外務・ヨーロッパ問題大臣付協力担当大臣:アンリ・ド・ランクール
- 内務・海外県・海外領土・地方自治体・移民大臣付地方自治体担当大臣:フィリップ・リシェルト
- 国務大臣・外務・ヨーロッパ問題大臣付外務担当大臣:ローラン・ヴォキエ
- 労働・雇用・厚生大臣付職業訓練・職業教育大臣:ナディーヌ・モラノ
- 内務・海外県・海外領土・地方自治体・移民大臣付海外県・海外領土担当大臣:マリー=リュス・パンシャール
閣外大臣
(Secrétaire d'Etat)
- 経済・財政・産業大臣付貿易担当大臣: ピエール・ルルーシュ
- 労働・雇用・厚生大臣付厚生担当大臣:ノラ・ベラ
- エコロジー・持続可能開発・運輸・住宅大臣付住宅担当大臣:ブノワ・アパリュ
- 予算・公会計・公務員・国家改革大臣付公務員担当大臣:ジョルジュ・トロン
- 連帯・社会的団結大臣付副大臣: マリー=アンヌ・モンシャン
- エコロジー・持続可能開発・運輸・住宅大臣付運輸担当大臣:ティエリー・マリアニ
- 経済・財政・産業大臣付貿易・手工業・中小企業・観光・サービス・自由業・消費担当大臣:フレデリック・ルフェーヴル
- 国民教育・青少年・市民生活大臣付青少年・市民生活担当大臣:ジャネット・ブグラーブ
参考
- 在京仏大使館ホームページ、Le Monde紙(2010.11.15) 、海外委託調査員
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