経済刺激策による雇用創出効果を確認
―政府によるレポートとその評価

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2009年11月

総額7870億ドルの経済刺激策(2009年2月決定)は、8月の時点で1282億ドルが執行された。プログラムを実行する省庁別では、保健社会福祉省(HHS) :349億ドル、労働省:308億ドル、教育省:226億ドル、社会保障庁:132億ドルの順となっている(注1)。

保健社会福祉省への資金は、非営利組織を強化し低所得者層の経済的な回復を促進することを目的とするコミュニティ強化のためのプログラムや、ヘルスセンターの診療記録の電子化およびネットワーク化を目的とするプログラムのためのものである。一方、保健社会福祉省に続いて2番目に大きな規模になっている労働省が実施するプログラムは各州政府が運営する失業保険制度の改革や失業者を対象とした州レベルでの職業訓練プログラムの支援のために活用されている。

このような経済刺激策の効果は徐々に顕在化している。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)では、経済活動の深刻な落ち込みから上向きに転じたと委員の見解が一致した。ただ一方で、委員の多数は、労働市場や製品市場については、今後数年にわたりかなり停滞傾向が続くという見方をもっており、賃金と物価上昇が抑制される可能性もあると指摘している(注2)。

また、全米サプライ・マネジメント協会が発表するISM製造業・非製造業景況感指数によれば、2008年1月以来縮小傾向にあった製造業が2009年8月に19カ月ぶりに拡大傾向に転じ、サービス業では2009年9月、2008年8月以来13カ月ぶりに拡大傾向に転じた(注3)。

経済刺激策の効果を検証する政府のレポートも公表されている。大統領経済諮問委員会(CEA)が9月10日に発表した『アメリカ復興再投資法2009年第1四半期レポート』によれば、アメリカ復興再投資法による効果によって、第2四半期のGDPが2.3%ポイント引き上げられ、第3四半期では2.7%ポイント引き上げ効果があるだろうと結論づけた。このことによって雇用への効果は第3四半期の時点で60万人から110万人増の効果があると試算している(注4)。同じくホワイトハウスが10月19日に公表したレポート『アメリカ復興再投資法の教育への効果』によれば、公立の学校や高等教育機関によって25万人の雇用が維持または創出されたとしている。その一例として、ニューヨーク市では教員の職が1万4000人以上、カリフォルニア州ロサンゼルスでは教員の職が6326人分、フロリダ州のマイアミでは職員1944人分、ネバダ州ラスベガスでは職員1100人分などが挙げられている(注5)。

ただ、こうした効果が見える一方で、現在決定している施策では十分な回復が実現しているわけではなく、次なる施策を実施すべきとの見解がある。ペロシ下院議長(民主党・カリフォルニア州選出)は、更なる雇用創出と失業者支援のための施策を、雇用創出プログラムへの直接の支出と税制面での対策など多面的に考えるべきであるとしており、実際に9月に失業率が高い州を対象として緊急失業給付期間を更に13週延長する法案を提出している(注6)。また、ムーディーズエコノミーのマーク・ザンディ・チーフエコノミストは、現時点で見え始めている回復は暫定的なものであり、来年、再び景気後退局面に突入する懸念材料が残されていると指摘する。その上で、就業者人口が今回の景気後退前の水準に戻るには2013年までかかると分析している(注7)。

参考レート

  • 1米ドル(USD)=90.62円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年11月5日現在)

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