『起業による就業促進の推進に関する指導的意見』を制定

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2009年1月

農村からの都市部への出稼ぎ労働者である「農民工」は現在、約2億3000万人に達する。農民工の多くは沿海部の輸出関連企業で働いているが、世界経済の急減速で職を失い、故郷に戻る出稼ぎ労働者も目立ち始めている。政府はこうした農民工の雇用問題に強い危機感を募らせており、再就職支援など農民工対策を強化する方針を示している。その一環として10月30日発表されたのが、『起業による就業促進の推進に関する指導的意見』。中国人的資源社会保障部を含む10の省庁が参画し策定した。内容は新規起業者に対する参入規制の緩和や行政の審査許可に係る手続きの簡略化、出稼ぎ労働者らが起業する際の金融サービスの整備などが柱。故郷に帰る農民工などに起業による就業を促進することで関連雇用を生み出す効果を狙ったものといえる。

指導的意見の概要

10の主要省庁が参画し発表された『指導意見』は、「起業による就業の促進は就業拡大発展戦略の重要な内容であり、新しい時代において積極的に実施すべき就業政策の重要な任務である」とこの文書の重要性を位置付けている。背後に中国の就業をとりまく情勢は依然として厳しくこれを放置できないという中央の危機感がある。

個人の起業を促進するための方策として挙げられているのが、まず起業家が市場に参入する際の規制緩和だ。起業を阻む行政面での障害、地域的な障害、経営面での障害を取り除くとしている。また、法律で禁止されていない分野については起業家に開放されるべきだとし、国で規制のために条件や基準が定められている分野についても起業主体に平等に対応することを求めている。具体的には、起業家が資本金を準備する際分割で登録できるようにする、また参入する業界の特徴に照らして資金、人員といった面での参入許可条件を合理的に設定する――など。さらに、起業家が自宅、賃借した場所、臨時の商業用建物等を起業、経営の場所とすることを許可し、各地域、各関連部門はそれぞれの実情に照らして、高等教育機関の卒業生、失業者、農村に戻った出稼ぎ労働者が起業する場合の市場への参入条件を緩和することができるとしている。

『指導意見』はまた、起業に関わる行政の審査許可事項を整理、規範化し、審査許可、証明書発行等の手続きを簡略化するとしている。具体的方策としては各種審査許可、確認、登録に関する事項や手続きマニュアルの発行など。審査手続きの一括取り扱い、窓口の統一、迅速な取り扱いを推進し、起業に迅速で簡便な「グリーンルート」を開くことも盛り込まれている。

他方、起業の際の資金不足の問題は、個人の起業を難しくする問題点の1つであるが、この点についても『指導意見』は具体的な規定を行っている。例えば、農村に戻った出稼ぎ労働者が起業することを想定し、農村における貸付保証方式の刷新、起業する際の金融サービスの拡充を行うとしている。また、農村における起業投資メカニズムを構築し、外資や国内の社会資本を利用した起業を奨励、条件が整った地域には様々な形式の起業投資誘導基金を設立し、企業の設立と発展を促進するとしている。

このほか、初めて起業する人々の経験不足の問題を軽減するため、政府は、起業家に対する各種研修を行い、都市・農村の様々な労働者が起業する場合にあわせた起業研修体系を構築し、起業研修の範囲を広げ、起業の意思があり研修の必要のある全ての労働者を徐々に起業家研修の対象としていくことを打ち出している。

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