所得税、法人税の減税を柱に
―ブッシュ大統領、緊急景気対策を発表

カテゴリー:雇用・失業問題

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サブプライム(低所得者向け高金利型)住宅ローン問題をきっかけに、米国経済の景気悪化が懸念され、2007年12月の失業率は2年ぶりに5%台を記録した。ブッシュ大統領は1月18日、緊急景気対策を発表した。予算規模はGDPの約1%に相当する1400億ドルから1500億ドルが見込まれ、所得税と法人税の減税が柱。

失業率、2年ぶりに5%台へ

米国連邦労働省が1月4日に発表した雇用統計によると、2007年12月の失業率は前月の4.7%から5%に悪化した。5%台になったのは2005年11月以来、約2年ぶり。就業者数の動向は、専門職や教育関係などサービス部門で増加したものの(注1)、製造業での減少が大きく、非農業部門全体での増加幅が1万8000人と4年4カ月ぶり低水準に落ち込む結果となった(注2)。下院ペロシ議長(民主党)は「明らかにブッシュ政権の経済政策が中所得者層に機能していないことを表している」とコメントした。ムーディーズ・コムのエコノミスト、マーク・ザンティ氏は、何らかの対処を怠ると経済は景気後退局面へと向かうとの見解を示した。

ブッシュ大統領は、1月4日以降、バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長、ポールソン財務長官や米下院のペロシ議長(民主党)らと協議を重ね、1月18日、緊急経済景気対策を発表した。対策の規模はGDP(国内総生産)の約1%に相当する1400億ドルから1500億ドル前後となる見込み(注3)。

記者会見の席上、同大統領及びポールソン財務長官は、個人や企業向けの減税を柱とする即効性がある対策に力を注ぐと述べた。民主党から貧困層向けの食料品購入券増発、失業保険給付延長に加えて、公共投資の追加要求が出ていることを指摘する記者からの質問に対して、ポールソン長官は協議の対象とする考えを述べた。ただ、消費刺激のために納付した個人所得税を還付する戻し税や企業の設備投資の優遇税制を中心に、企業活動を促進し雇用の拡大につながるものが中心になると説明した。その上で、ポールソン長官とラジアー米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は「今年中に50万人の雇用創出効果がある」との見通しを明らかにした(注4)。また、タックス・ファンデーションのシニアエコノミスト、ゲラルド・プランテ氏によると、この景気対策が実施されれば、個人消費者にとって800ドル、世帯では1600ドルの減税効果があるという。

民主党のヒラリー・クリントン大統領候補はこの対策について、不十分であると述べている。同氏とオバマ候補はブッシュ大統領の景気対策に先立ち、1100億ドル規模の景気対策安を発表しており、これが大統領の対策に少なからず影響を与えたものと考えられる。

一方、共和党のロムニー、ハカビー両候補はブッシュの景気対策に賛意を示した。ただ、ロムニー候補は2500億ドルの景気対策を独自に提案、(1)法人税の課税率上限を35%から25%へ下げ、(2)低所得者層の所得税課税率を10%から7.5%へ下げる――などを具体策として挙げている。

参考

  • New York Times, Jan.5, 12, 19
  • Los Angels Times, Jan. 18, 19

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