雇用保険料引き下げへ
―政府、現状維持派を押し切る
連邦政府は10月15日、来年から雇用保険料を現在の3.3%から3.0%に引き下げ、これに加えて18カ月間の限り2.8%まで引き下げる時限措置を講じる閣議決定に至った。失業の減少傾向により、今年10月の失業水準は過去17年で最も低水準で、300万人を下回った。このため、失業保険収支が黒字となり、十分な積立金がプールされた。この積立金を、失業保険料率を2.8%とする18カ月間の減収分に充当する。ドイツの雇用保険料率は2006年時点では6.5%とかなり高水準で、ここ数年政府は、毎年雇用保険料率の引き下げを行ってきた。今回の料率改定により、僅か2年間の引き下げ幅が50%以上に及ぶが、それでも日本の雇用保険料率(1.5%)を大幅に上回る水準だ。
労使折半による社会保険料率、全体で39.25%へ
今回の雇用保険料の引き下げは、医療保険料の0.6%の引き上げと抱き合わせで実施され、労使折半による社会保険料率は全体で39.25%となる。現行料率の39.16%をやや上回るものの、連立政権合意書が掲げた負担率上限の40%以内に収まる。ドイツの雇用保険料は、2006年時点では6.5%とかなり高水準だったが、2007年に4.2%、2008年で3.3%と漸次引き下げを実施してきた。今回の改訂は最も引き下げ幅が最も大きいが、それでも日本の料率よりかなり高い水準だ。今回の政府案に対し左派党は、景気後退やマイナス成長を理由に現行料率の維持を求める案を国会に提出していたほか、雇用エージェンシーも慎重な姿勢を示していたが、最終的には政府案で12月の国会通過に至った。
他方、医療保険料率は12.2%~17.4%とこれまで保険団体によって料率が異なっており、平均で14.9%だった。今回の料率改定は、2009年からの保険料徴収一元化に伴うもの。新たな統一料率は15.5%となり、徴収業務は2007年に設立された健康基金が一括して行う。保険料の統一の狙いは、拡大の一途をたどっている医療費負担について、国民全員が同条件で保険給付を受けられるようにすること。統一料率について10月にスタートした政府と保険団体との調整は、被保険者の負担が増加することから、ぎりぎりまで難航を極めた。保険団体は15.8%を要求していたが、政府は、燃料・食糧費の高騰による国民負担増を考慮して15.5%で押し切り、これと並行して、国庫から法定疾病保険への40億ユーロの拠出が決まった。
資料出所
- 委託調査員月例報告
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=118.00円(※みずほ銀行ホームページ2008年12月3日現在)
2008年12月 ドイツの記事一覧
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- 雇用保険料引き下げへ―政府、現状維持派を押し切る
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