外国人労働者の高度人材枠、20%強が不適切な運用
―一方で、人数枠の拡大求める声も

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2008年11月

一時的にアメリカ国内で就労を許可された労働者のうちH-1Bビザの取得者は、大卒以上の学位を得た高度人材(Highly Skilled Workers)と位置づけられている。国内では確保できない技能を有している労働者として、アメリカ経済の国際競争力を高めると期待されている。しかし、このビザ取得者の20%強が失業状態かその技能にふさわしくない低技能職場で働いているとの調査結果が明らかになった。こうした不適切な運用実態が指摘される一方で産業界からはビザの発給数の拡大を求める声も出ている。

失業状態か低技能職場での就労

国土安全保障省市民移民サービス局の発表(注1)によると、H-1Bビザ申請の約21%が不正または違反であることがわかった。調査は2005年10月1日から2006年3月31日までにビザ申請を承認された案件のうち246件を無作為抽出して調査を行ったもの。13.4%に申請上の不正があり、7.3%がビザ制度に抵触する違反が見られたとする。同時期の全発給数9万6827件のうち約2万0000件に不正または違反があると推定すると結論づけた。

この調査における「違反」とは、(1)ビザによって就労が認められていない職場で就労したり、職務内容と異なる就労をしている(2)職務内容からふさわしいとされる賃金水準(注2)から下回っている(3)ビザ申請で要件となっている学位や職務経験に偽りがある(4)仕事上のポストがビザ申請に記載されていたものと異なる―などである。

この報告を受けてチャールズ・グラッセリ上院議員(アイオワ州選出・共和党)は、抜本的な改革が必要であるとしている。

また、移民政策研究所(Migrant Policy Institute)が10月22日に発表した報告書(注3)によると、大卒(学士取得)の外国人労働者610万人の22%に相当する130万人以上が、失業状態にあるか、あるいはビザ申請の相当する職種とは異なる職場で就労していることがわかった。彼らは、本来、学術的あるいは専門性の高い職に就くことを前提として滞在許可されているが、実際には、皿洗いやタクシードライバー、ガードマンといった技能を必要としない職に就いているという。

地域的にはラテンアメリカやアフリカからの外国人労働者が特に多い。また、技能を必要となしない職に就いている者には次のような傾向が見られたという。英語の語学力が低い者が技能を必要としない職に就く可能性が高く、その確率は、英語が熟達している者の2倍である。また、米国以外で学位を取得している者は、米国内で学位を取得した者に比べて3倍、技能を必要としない職に就く可能性が高い。

EU諸国などに対抗

その一方でH-1Bビザ発給数は米国経済のニーズを十分に満たしていないとする意見もある。当海外労働情報2008年6月でも紹介したように、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は、3月12日の下院科学技術委員会の公聴会において、H-1Bビザの発給数が経営者の申請数を大きく下回っている事態が続いているために、発給枠の拡大を求めている。

Practising Law Institute主催で10月14日から15日にかけて行われた会議において、American Council on International PersonnelのエグゼクティブディレクターLynn Shotwell氏は、ヨーロッパ諸国との競争力維持のためには、H-1Bビザの発給数は十分ではないとの見解を示した。同氏はヨーロッパ諸国ではアメリカのグリーンカードに相当するブルーカードを創設して有能な人材を引き寄せようとしていることを引き合いに出し、アメリカもグリーンカード制に基づく永住を前提とした有能な人材を積極的に受け入れるべきであると強調した。

また、ポールヘイスティング法律事務所で移民関連のコンサルティングに携わっているBo Cooper氏は、カナダのアルベルタ州ではアメリカのH-1Bビザ取得者とその家族を対象として、カナダ永住権を付与する条件で受け入れようとする広報活動を行っているとする。同氏はアメリカ政府が有能なH-1Bビザ取得の人材を引き止めようとすることに関して無策であると指摘する。

参考

2008年11月 アメリカの記事一覧

  • 人員削減、急速に拡大
  • 外国人労働者の高度人材枠、20%強が不適切な運用―一方で、人数枠の拡大求める声も 

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