人員削減、急速に拡大

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2008年11月

景気低迷による売上の減少や経営状態悪化に伴って、米国企業による事業再編や人員削減の発表が目立ち始めている。特定の業種にとどまらず、自動車、電子機器、製薬といったメーカーから金融、情報通信といったサービスまで幅広い(表1参照)。

自動車メーカー、人員削減相次ぐ

米自動車最大手ゼネラルモーターズ社(GM)は、売上低迷を受けて、矢継ぎ早に事業閉鎖、レイオフを発表した。

同社は10月2日、オハイオ州モレーンのスポーツ用多目的車(SUV)の工場を12月23日で閉鎖し、時間給労働者を中心とする約1200人の人員を削減すると発表した(注1)。

その後、ほどなくして、10月13日、ウィスコンシン州ジェーンズビルにある組立工場とミシガン州グランドラピッズ近隣にある自動車部品のプレス工場を12月23日付で閉鎖する方針を明らかにした。ジェーンズビル工場で就労する時間給労働者は約1200人、給与労働者は60人、SUV「ユーコン」と「サバーバン」の組立を行っている。グランドラピッズの工場では、時間給労働者1340人と給与労働者180人が勤務し、同工場で生産される自動車部品の約40%は大型のトラックやSUV向けのもので、販売減を受けた措置である。

また、10月16日には、大型車やピックアップトラック、2人乗り小型車を製造しているミシガン州とデラウエア州の一部工場で、時間給労働者1500人をレイオフすると発表。これは、クライスラーとの合併話が進む中、合理化計画をさらに進める狙いがあるとみられている。

一方、クライスラー社は、10月23日、オハイオ州のトレド工場とデラウエア州ニューアーク工場の組み立てライン、時間給労働者1825人を人員削減すると発表。翌日には、給与労働者、契約労働者についても1万7332人を対象に早期退職プログラムなどによって5000人の人員削減を計画していると発表した。

さらに、フォード・モーターは16日、小型ピックアップトラック「レンジャー」を組み立てているセントポール工場を12月の稼働を休止すると発表した。同工場は例年、12月のクリスマス休暇時に1週間休業しているが、今年は生産調整のため4週間休止することになった。

ディーラー、未曾有の販売低迷

新車ディーラーも苦境に立たされている。今年になって700ものディーラーが撤退した。これは昨年の430を大きく上回る。しかも700のうち590が9月期だった。

ニュージャージーで1942年に創業した92歳のディーラーによると、8月には販売台数40台であったのが9月には7台に落ち込んだ。これまで幾度となく不況を乗り越えてきたが、今回は資金繰りがどうにもならなく、従業員26人はすべて解雇することになったと話す。

自動車産業以外でも、10月中下旬に、飲料メーカー・ペプシ社、複写機メーカー・ゼロックス社、半導体メーカー・マイクロンテクノロジー社、製薬会社・メルク社などが大規模な人員削減またはレイオフを発表した(表1参照)。

なお、全国製造業協会(National Association of Manufacturing)による314社(中小企業)を対象とした調査結果によると、2008年中に人員削減を予定している企業が昨年と比較して増加し、人員増を予定している企業が減少した。当年中に人員削減を予定している企業は18%(2007年)から24%(2008年)へと増加し、人員増を予定している企業は47%(2007年)から40%(2008年)へと減少した。また、航空輸送協会(Air Transport Association)の発表によると2008年中に米国の旅客・貨物航空輸送産業において、約3万6000人の雇用機会が削減される見込みだという。

出所:Daily Labor Report, BNA, Sep. 10, 22, 29, Oct. 7, 14, 15, 21, 22, 23, 24, 27, 29, 31, 2008, Wall Street Journal, Oct. 14, 22, 24, New York Times, Oct. 15, 22, 23, 時事通信社 JIJI-WEB, 10月17日より作成

参考

  • Wall Street Journal Oct. 14, B2, 28, B1
  • Daily Labor Report, BNA, Sep. 3, 22, Oct. 7, 27

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