家族呼び寄せの条件を一段と厳格化
―移民法改正案、国会審議始まる

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2007年9月

移民法改正案の国会審議が9月18日から始まる。移民の家族を呼び寄せる条件を一段と強化するのが法案の柱。サルコジ大統領は選挙公約で、無差別の移民流入を規制し、フランスの経済需要に合致する移民の受け入れ促進をうたっている。法案もこうした「移民の選別強化」を狙いとしており、各方面の抵抗も強く、審議の難航も予想されている。なお、移民規制に関する法案は2003年からすでに4本目にあたる。

語学、国家理念に関しテスト

改正案によると、すでにフランスに在住している者の16歳以上の家族が入国・滞在を希望する場合、フランス語の語学力及びフランス共和国の理念に関する知識を証明するテストを受けなくてはならない。合格ラインに達しなかった場合、最長で2カ月の研修を受け、その修了証書を提出する必要がある。テスト及び研修はフランスではなく入国希望者の現在の居住国において実施される。

家族を呼び寄せるためには、住居と家族手当等を受給せずに生活できるだけの収入があることを証明しなくてはならない。収入条件については、2006年7月の移民法改正により「(家族の規模にかかわらず)少なくともSMIC(最低賃金)以上の収入があることを証明しなければならない」とされたが、今回の改正案ではこれをさらに強化。諸手当を除く収入が「家族の規模により、SMICと同額からSMICの1.2倍まで」と定められた。

家族呼び寄せ制度によって入国する家族は全員が「受入・統合契約(CAI :Contrat d'accueil et d'integration)」に署名しなくてはならない。同契約は、移民の社会統合促進を目的として2003年7月に導入されたもので、新規に滞在許可を申請する移民者とフランス共和国との間で交わされる。移民者は、フランス語や市民教育講座に出席することを約束し、それに対して国家は就職や職業等に関する情報の提供や各種支援を保障するというもの。試験的導入を経て2006年から全国で義務付けられた。

法案では、同契約に「親の権利と義務に関する研修」を盛り込み、親に子供のフランス社会への同化、特にフランス語の能力の向上について制約を求める。契約に反した場合は、家族手当支給の減額ないし停止もありうる。

また、法案にはこれまで外務省の管轄下にあった亡命に関する行政手続きを移民・統合・国家アイデンティティ・共同開発大臣が担当することが明記された。複数の省庁が関連していた移民政策を、移民・統合・国家アイデンティティ・共同開発省に一本化し、首尾一貫した移民政策の実施が狙い。これまでビザ及び難民保護は外務省、滞在許可証の交付は内務省、労働許可の申請や滞在許可の資格変更処理は雇用省、婚姻による国籍取得は法務省――というように移民に関する行政手続きの所轄省庁が異なり、非効率性などが指摘されてきた。

背景に移民の選別化

サルコジ大統領は、「移民に対して開かれた国であり続けなければならないが、誰がフランスに滞在すべきで、誰が滞在すべきでないかを決める権利は、当然フランス自身にある」と常に主張してきた。

政府の発表によれば、2005年に18万5000人の外国人に滞在許可証が発行されたが、そのうち9万4500人が家族呼び寄せによるもので、次いで学生が4万9000人。経済的需要に応える移民は1万3000人で、全体の7%に過ぎない。

国が必要とする移民、フランスの経済・社会的発展に寄与する移民のみを受け入れるという「移民の選別化」を主張するサルコジ大統領は、この7%に過ぎない経済的需要に応える移民を50%にまで引き上げるよう、7月9日にオルトフ移民大臣に通達を出している。こうしたサルコジ大統領の徹底した移民の選別化策に対する批判の声は多く、審議の長期化も予想される。

就任以来、サルコジ大統領は公約実現を急ピッチで進めており、超過勤務促進策(注1)は8月1日可決、スト時の最低限の運行義務付けに関する法案(注2)は7月30日に審議を開始、8月2日深夜に可決している。

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