欧州における社会連帯の推進の動き

カテゴリー:雇用・失業問題高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2007年3月

2月22日、欧州連合(EU)加盟国の雇用・社会政策・厚生・消費者問題担当閣僚会合が開かれた。これに先立ち1月19日に欧州委員会より提案された「社会保護共同報告書」が議題にのぼり、加盟国が社会連帯政策を改善する必要性と、そのために必要な予算の支出に関して議論が行なわれた。この報告書は、(1)雇用と成長、(2)人口構成と健康、(3)家計支出と安定性、(4)社会融和と年金制度の完備という分野について、加盟各国状況をまとめている。大臣会合の結果、特に社会融和、年金制度、健康管理の分野において対策を推進する必要性を強調することとなった。3月8日・9日に開催される欧州理事会では、成長と雇用のための戦略を社会的側面から支援するものとして、この報告書の内容が議論される予定である。

報告書は、2004年時点で、欧州の16%の人々が貧困の危機に直面しており、EU域内の世帯の10%が家族全員無職の状態にあることを問題として取り上げている。ここでの貧困危機とはEUの所得と生活条件調査に基づき、可処分所得が全国レベルの中央値の60%以下に属する者を貧困ライン以下として算出している。ちなみに、貧困の危険度に関して各国別でみるとスウェーデンの9%、オランダの11%に対して、リトアニアとポルトガルの21%という格差が見られる(詳細に関しては図表1参照)。また、家族全員が失業状態にある世帯の割合はキプロスの4.9%、ポルトガルの5.8%に対して、ベルギーの14.3%、ポーランドの13.5%という格差が見られた。

こうした貧困に関する格差に対しては、社会から排除されている人々のために積極的な包摂策をとることが最も有効であると加盟国で共通認識が得られている。失業状態にある者に最低レベルの生活を営むために必要な所得を保障し、ホームレスや障害者、移民、少数民族に対しては特別な措置を講ずることが必要であるとしている。

年金制度に関しては、少子高齢化の動向を受け、安定的な年金制度を運営していくために、高齢者(55歳から64歳)の就業率を引き上げることが政策目標とされている。現段階における一般的な年金受給資格年齢とされる65歳以上の高齢者に関して、年金受給額が十分でない、あるいは受給資格を得られない等の理由から、貧困の危機にさらされている者もいる。キプロス(51%)、スペイン(29%)、ポルトガル(28%)の高齢者が高い比率で貧困の危機に遭遇している一方、オランダやチェコ(5%)、ハンガリー(6%)、ルクセンブルグやポーランド(7%)などでは低い水準になっている(詳細に関しては図表1参照)。

こうした状況に対して、リスボン戦略は55歳から64歳層の就業率を2010年までに50%に引き上げることを目標値として掲げている。各国の実状をみると、スウェーデン(69%)、デンマーク(60%)が高い水準にあるのに対して、ポーランド(27.2%)、スロバキア(30.3%)、スロベニア(30.7%)、イタリア(31.4%)は低い水準となっている。

また、健康保健の水準に格差があることについても言及している。GDPに占める健康保健支出の割合をみると5%から11%の開きがある。ドイツ10.9%、フランス10%であるのに対して、エストニア5.5%、ルーマニア5.7%、スロバキア5.8%となっている。その結果として、欧州加盟国の間で平均余命の格差が生じていると報告書は指摘する。男性の平均余命は、スウェーデン78.4歳、ドイツ76.5歳であるのに対して、リトアニア64.4歳、エストニア66.5歳、ルーマニア68.9歳である。女性ではスペイン83.9歳、ドイツ81.9歳であるのに対して、ルーマニア75.4歳、スロバキア78歳である(詳細に関しては図表1参照)。健康保健制度を全国民に均等に利用可能な状態とするために各国での格差を是正する必要がある。人口構成の変化を踏まえて、長期的な保護を実現し、費用負担と給付のバランスをとりながら資源を有効活用するような制度にしていく必要があると指摘している。

出所:EU委員会ホームページより作成

参考

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