失業率統計、国際基準にあわせ修正の動き

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2007年3月

中国政府発表の失業率は、2005年末時点で4.2%であった。これは、都市登録失業率で、その定義は、「法定労働年齢内で労働能力があり、現時点では仕事がないが求職活動を行っているもの」である。この場合の失業者は、仕事を失った人と新卒で就職できなかった人たちが含まれている。しかも、再就職センターなど現地の就業機構に登録している16歳から50歳までの男性と16歳から45歳までの女性で、都市戸籍者に限られる。

中国のメディアによると、都市登録失業率は、中国の失業の実情を反映していないのではないかという疑問が内外から投げかけられており、政府も農民も調査に組み入れる仕組みを検討し始めているということである。

2006年」の国家公務員試験が終了した段階で、36万人の受験者に対して1万人の採用が行われることになるが、中国の大学を含む高等教育機関の卒業生は400万人をこえる。昨年と比べても60万人以上の増加である。大学卒業者の失業問題は深刻なものとなっており、特に北京大学や精華大学などの重点大学でない、地方の新設大学の卒業生には農村戸籍のものもおり、深刻な失業の現状が表面化しづらい側面が存在している。

改革開放前の中国では、社会主義の理念の下で国が労働者に仕事を与えていたため失業者は存在してないことになっていた。また、文化大革命で下放された青年が、文革が終わり都市に戻ったとしても仕事がない場合、「待業青年」として失業者に組み入れられていなかった。さらに、国有企業改革で大量に発生したリストラ労働者である「下崗」も、一時帰休労働者として失業者としては数えられていない。

専門家によると、登録失業率の概念は、社会保障体系の必要からきたものであり、都市登録失業率は最低生活保障とその他の救済措置の需給と密接な関係があるといわれる。

したがって、現在中国の都市登録失業率という概念は、非農村戸籍者、すなわち都市戸籍者の統計である。

近年の目覚しい社会経済の発展は、沿海部を中心に、最近では内陸部においても農村からの余剰労働者を都市における出稼ぎ労働者として受け入れるようになっている。さらに、ここ数年は、沿海部を中心に出稼ぎ労働者の不足問題や、また都市においては、依然労働者の失業問題は存在しており、経済成長を左右する重要な課題となっている。労働市場における需給のミスマッチを防ぎ、労働市場の需給調整機能を高めるためには、農村戸籍者も組み入れた失業率統計が必要となっている。

2004年9月、国務院は「労働力調査制度創設にかかる通知」を発行し、労働力調査制度を創設、国家統計局は、2005年11月から、正式に都市と農村を含んだ労働力調査制度を開始している。

この調査による失業率は、いわゆる「調査失業率」と呼ばれる。標本調査による失業率であるが、「失業人口」は、16歳以上で仕事をする能力があり、無職でかつ求職活動をしつつ、就職できていない人口と定義される。

中国の労働力統計では、「経済活動人口」は、16歳以上で、労働能力があり、社会経済活動に参加あるいは、参加を望む人口の総和と定義される。したがって「失業人口」と「就業人口」の総和のことである。

また、「経済活動人口」に相対する概念として、「非経済活動人口」があるが、16歳以上で社会経済活動への参加を必要としない人口のことで、遺産相続などで仕事をしない人たちがこれにあたるということである。

このように、「調査失業率」は、都市、農村の両方の人口を対象として含み、農村を離れ都市に移住し、半年を経過した人口はすべて都市人口の範囲に含めるというものである。

都市農村労働力調査は、2005年11月に最初に実施されたが、2006年は5月と11月の2度にわたり実施された。「調査失業率」の概念の導入により、国際的な水準が担保されるよう、現在、中国では取り組みが進められている。

参考資料文献

  • 南方週末2006年11月30日付
  • 丸川智雄「労働市場の地殻変動」名古屋大学出版会ほか

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