2007年賃金交渉のゆくえ

カテゴリー:労使関係

ドイツの記事一覧

  • 国別労働トピック:2007年2月

化学、建設、金属、商業分野で働く約700万人の労働者を対象とする賃金交渉が1月末から開始された。2006年のドイツ経済は2.5%の高い成長を記録し、政府の年次経済報告によれば2007年も1.7%の好景気が持続すると予想されている。労働組合にとっては追い風の中の賃金交渉となりそうだ。他方、欧州中央銀行やドイツ連邦銀行は、インフレを誘発するような高い賃上げは、利上げにつながるとして警戒感を示している。

金属産業の賃金交渉

約340万人の労働者を組織するドイツ金属産業労組(IGメタル)は、賃金交渉の影響力が最も大きい産業だ。今年の交渉を左右する要因に付加価値税がある。2007年1月より16%から19%に引き上げられた影響を、どのように賃金に反映させるかが1つの焦点となっている。IGメタルは、2007年の消費者物価上昇率を2.3%、生産性上昇率を1.8%と予測し、これらを合計した経済的に中立な賃上げ幅を4.1%と試算。金属産業の好景気を背景にさらに高い賃上げを求めている。

これに対して金属産業経営者連盟は、付加価値税の引き上げと同時に失業保険料が6.5%から4.2%(労使折半)に引き下げられたため、実質的には労働者の負担増になっていないと主張。好業績の還元は、賃上げでなく、ボーナスによって行うべきであるとしている。

IGメタルが最も重要視している南西地域のバーデン・ヴュルテンベルク地区賃金委員会は1月25日、6.5~7.0%の賃上げ要求を行う意向を示した。これに続いて、連邦レベルでも、2月6日に各地区の賃金委員会に対して6.5%の賃上げ要求を推奨する方針を決定した。これを基に各地区でさらに討議が行われ、最終的にIGメタルとして2月26日に賃上げ要求を確定する予定である。実際の交渉は地方レベルで行われる。バーデン・ヴュルテンベルク州においては、3月14日に交渉担当者が初めて顔を合わせる予定となっている。労使合意により賃金協約期間終了後4週間はストライキを実施できない平和義務期間とされており、その期限が切れる4月28日以降には労組が警告ストを実施する可能性がある。

IGメタルは、2006年の賃金交渉で3%の賃上げと310ユーロの一時金支給(業績に応じて変動の可能性あり)で妥結している。

他産業の賃金交渉

化学産業は今回、一番初めに交渉を開始した。鉱業・化学・エネルギー労組(IG BCE、約56万人)は、連邦レベルで約4%台の賃上げを求めており、有力化学企業のある州では6.5%の賃上げを要求している。2005年の賃金交渉では、2.7%の賃上げと1.2%の特別手当支給で妥結した。

建設業界の交渉は2月14日に始まる。建築産業労組(IG BAU、約70万人)は、ここ10数年で最も高い5.5%の賃上げを要求している。最終交渉が3月31日に予定されており、それまでに合意に達しない場合は、仲介人が立てられる。それでも不調に終わればストライキに突入する可能性がある。

食品・嗜好品・飲食業労組(NGG、約180万人)は、4.0~5.5%の賃上げを要求している。賃金交渉は州レベルまたは個別企業において行われる。

小売業の賃金協約は早い地域で3月末に失効する。小売業は付加価値税の引き上げが、販売状況に直接影響する業界であるため、使用者側はこの点を賃上げが困難な理由として挙げている。小売業の労働者を組織する統一サービス労組(Ver.di、約270万人)は昨年約1%の賃上げを獲得した。

公共部門(連邦・自治体)の賃金協約の期限は今年12月末となっており、来年に交渉が行われる予定である。

参考

  • 1月2・3・26/27/28日付ハンデルスブラット紙
  • 1月23日付フランクフルター・ルントシャウ紙
  • 2月6日付ファイナンシャル・タイムス紙
  • IGメタル・ホームページ

参考レート

関連情報