経済財政計画書の要点
イタリア政府は、経済財政計画書(DPEF)を提示して、経済計画に関する重要な一段階を完了すると同時に、2007年予算法の提示に繋がる予算手続を開始した。経済財政計画書と政府の提示した修正措置の主たる目的は、「マクロ経済の不安定と社会的混乱を促進した1990年代半ばからの成長の鈍化を経てイタリアの経済が経験した文字通りの紛糾状態を緩和することである」。その導入部分には、次のように書かれている。「公的財源の構造的な回復策を定めるにあたって…、DPEFは、2011年に財政赤字を基本的にゼロにし(国内総生産の0.1%)、政府債務残高を国内総生産の100%未満に引き下げ(99.7%)、基礎的財政収支を安定させ(国内総生産の4.9%)、国内総生産の成長率を1.7%にするという立法目標を提案する」。イタリアの経済成長とインフレに大きく影響を及ぼしうる要素としては、原油価格が上げられている。
以下、経済財政計画書の内容である。
ビアジ法
計画書の中では、いわゆるビアジ法(2003年2月14日法律30号)の「再検討(rivisitazione)」が定められている。対象となるのは、大きな批判を浴びている雇用関係の不安定化の問題、具体的には不安定雇用と評価されるいくつかの労働類型を利用する場合の社会保険料の増額などである。計画書は、不安定雇用について、監視の目を強め、就業の場における安全を向上させるなど、まさに「措置計画」といえる内容になっている。また、期間の定めのない労働契約の類型を促進するために、その利用の妨げとなるような要素を縮小する措置を定めるほか、いわゆる「準従属労働者基金」(注1)への加入者に関する社会保険料の将来的な増加についても触れている。ビアジ法の「再検討」は、「呼出労働やスタッフ・リースといった、雇用の不安定化をきわめて容易にもたらしうる制度」から開始され、闇労働や非正規労働対策にまで及ぶ予定である。
企業
計画書の関心は、小企業および生産性の低い企業にある。つまり、「支援策を受けていた企業が成長した結果、その支援を打ち切られるような事態を避けることで、成長しようとするこうした企業を支援することが必要である」。しかし、支援策の改革のみならず、規模の拡大に関して要求される官僚主義的な要件の縮小や、新しい財政制度の発展の促進、国際化のプロセスに対する支援、企業網の創設の援助、そして、起業支援策の見直しや強化を行うことも必要とされている。
税金および年金
政府は、租税および社会保険料に対する圧力を定めている。つまり、国内総生産に対する税収および社会保険料収入の割合を、2005年の40.6%から0.6%引き上げて、今年は41.2%にすることを目標としている。この引き上げは、税金および社会保険料の賦課基礎となる所得の把握、つまり、税金・社会保険料逃れ対策を介して実施する。ただし、翌年以降は逆に、国内総生産に対する税収と社会保険料収入の割合の引き下げが予定されている(2007年41%、2008年および2009年40.9%、2010年40.8%、2011年40.7%)。これに対して、国内総生産に対する年金支出の割合は、高齢化の影響で中長期的な上昇が予想されている(2035年から2040年の間に最高値を記録し、2005年と比べて1.2%ほど高くなるとみられる)。計画書は、給付を削減することなく財政の均衡を保つ唯一の方法は、「社会保険料を捕捉し、とくに女性と高齢者層の就業率を高めて」就業人口を増やすことであるとしている。
南部
イタリアの各州の国内総生産の増加についてみると、南部の国内総生産は、「地域の回復に必要な財源配分や公的措置の質のさらなる向上といった、地域の構造的遅れと競争力を回復するような適切な経済政策の採用によって」、最終的にはヨーロッパ平均を上回る可能性もあるとされている。
保健
保健および家族の項目では、保健に関する費用をより効果的に管理する仕組みとして、24時間営業の診断施設を備えた家庭医システムの研究が挙げられている。この仕組みは、「家庭向けの夜間・休日の支援措置を強化することで、救急病院の混雑を緩和し、不適切な入院を回避する」ものである。計画書の中では、市民による医療費の一部負担制度(つまりチケット制)の可能性についても触れられている。
女性と母親
保育園の増加、不安定雇用における母性の保護、「ケア労働」にみられる非正規労働の正規化、女性企業家の促進、女性と男性のキャリア均衡の可能性。これらは、政府が、女性の労働市場への参加を促進するために必要と考える責務である。総じて、政府の意図は、「機会均等の文化を促進すること」にあるといえる。
注
- INPS(全国社会保障基金)の管轄する自営業者のための年金事業の1つで、プロジェクト労働者(連携的継続的労働者ないしco.co.co.、準従属労働者と呼ばれてきた)を対象とするもの。
出所
- Corriere della Sera紙(2006年7月8日付)
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