集団解雇における年齢均衡原則の導入

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年8月

オランダでは2006年3月、集団解雇に関する年齢均衡原則が導入された。この原則は、リストラに関する先任権原則に代わるものである。労働組合は、集団解雇における対象者の決定により均衡をもたらすとして、これを歓迎している。労使の代表が参加する社会経済評議会(SER)は2006年春、解雇法制のさらなる緩和に関する勧告を発表する予定であった。しかし、この問題をめぐって労使の意見は対立している。

年齢均衡原則の導入

オランダでは3月1日、集団解雇における年齢均衡原則に関する法律が施行された。この法律は、企業が事業再構築や大量解雇する際の対象者の選定について、これまでの先任権原則(勤続期間の短い者が先に解雇される)に代えて、年齢を決定基準にすべきであると規定している。雇用の削減数は、15~25歳、25~35歳、35~45歳、45~55歳、55歳以上の5つの年齢階層に均等に割り振られ、現存する従業員の年齢構成が可能な限り維持される。それぞれの年齢階層内の選定方法は、依然として、先任権原則が適用される。

労働組合は、集団解雇における対象者の決定により均衡をもたらすとして、これを歓迎している。使用者は、基本的にこの変更に反対してはいないが、とりわけ小企業においては、従業員の年齢構成と職務のバランスを取ることが困難であると主張する。また、集団解雇の初期の段階では、従業員は自身の立場に不確かであり、人事担当者の集中的なガイダンスが必要であると指摘している。

新しい制度は、以前の制度と比較して、高齢労働者に不利な影響を与える。オランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV)は、使用者は高齢労働者の代替雇用を見つけるのに十分な期間が必要であり、解雇計画にはそのための規定を盛り込む必要があるとしている。CNVは、長期間勤続している従業員には、他の仕事をみつけるためのより多くの機会を与えるよう提案している。

新しい解雇制度はまた、解雇事由を審査する政府の行政手続きを変更した。以前は、就労・所得センター(CWI)がリストラの経済的理由を審査していたが、使用者と労働組合が解雇数およびリストラ計画について、既に合意している場合、この手続きは必要なくなる。

使用者は、さらなる解雇法制の緩和を要求

使用者は、集団解雇の対象者の決定における能力基準の考慮や解雇手当の削減など、解雇法制のさらなる緩和を求めている。規制緩和は、経済をよりダイナミックにし、使用者の迅速な採用を奨励するとしている。他方、労働組合は、「雇用の柔軟性と安定のための法律」が、使用者に短期間で従業員を雇い入れるための十分な自由度を既に与えていると主張する。オランダ労働組合連盟(FNV)は、解雇法制のいかなる変更にも反対している。CNVは、解雇制度の緩和がより多くの雇用機会を生み出すわけではなく、従業員は短期間で採用されるかもしれないが、同じように短期間で解雇されうると指摘する。

労使の代表が参加する社会経済評議会(SER)は2006年春、解雇法制のさらなる緩和に関する勧告を政府に提出する予定であったが、労使の意見が対立している。オランダ産業経営者連盟(VNO-NCW)は既に、SERが全会一致の勧告に達しないという予測の下に、解雇制度に関する法案を準備するよう政府に要求した。

出所

  • 欧州労使関係観測所オンライン(EIRO)

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