社会福祉制度改正案に与野党が合意

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  • 国別労働トピック:2006年8月

2006年6月20日、政府与党及び同政府と閣外協力関係にあるデンマーク国民党、さらに野党である社会民主党、急進自由党は、早期退職手当て(注1)及び国民年金(注2)の受給開始年齢の引き上げなどを含む、社会福祉制度(主に所得保障制度)の抜本的改正に関する取り決めについて合意に達した。

このたび採択された制度改正案は、少子高齢化社会が急速に進行していることを踏まえ、今後とも持続可能で安定した行財政を確保し、将来にわたり福祉国家を維持することを大きな目的としている。以下がその概要である。

1)早期退職手当の受給開始年齢の引き上げ

  • 早期退職手当の支給開始年齢を2019年から2022年にかけ毎年0.5歳ずつ引き上げ、2022年以降の受給開始年齢は62歳とする。(表1及び表3
  • 同改正制度の適用対象となるのは、2006年12月31日現在で満48歳未満の勤労者及び自営業者である。ただし、2006年12月31日現在で満48歳以上の勤労者及び自営業者は同改正制度の適用外となり、手当て支給開始年齢は、従来どおり60歳。
  • 制度改正後の早期退職手当の受給期間は、従来と変らず最高5年間。

2)国民年金の受給開始年齢の引き上げ

  • 国民年金の支給開始年齢は、2024年から2027年にかけて毎年0.5歳ずつ引き上げられ、2027年以降の受給開始年齢は67歳になる。(表2及び表3

出所:Beskaftigelsesministeriet

3)早期退職手当・国民年金と平均余命

2025年以降、早期退職手当て及び国民年金の受給開始年齢は、60歳人口の平均余命の変化にスライドする形で調整される。60歳人口の平均余命が伸びない場合、早期退職手当て及び国民年金の支給開始年齢はそれぞれ62歳と67歳に据え置かれる。一方、60歳人口の平均余命の伸びが明らかになった場合、同手当及び同年金の2025年以降の支給開始年齢は変更・調整される。ただし、支給開始年齢を変更する場合、すでに2015年時点において当該変更を予告しなくてはならないとしている。

4)高齢失業者に対する日割り失業手当(失業保険)に関する規定(表4

  • 失業保険の給付期間は基本的には4年間だが、55歳~59歳の失業者については同失業保険手当の給付期間を最高9年間まで延長することが認められていた。しかし、高齢失業者に対する同特別規定は2007年7月1日をもって廃止される。ただし、2006年12月31日現在で満54歳以上の者については、従来の規定が適用され、最高9年間まで延長することができる。
  • 従来最高2年半までとされていた60歳以上の失業者に対する日割り失業手当ての給付期間を通常の4年に延長。
  • 58歳及び59歳の失業者に対して適用されていた活性化サービス給付を免除する特別規定を廃止し、58歳及び59歳の失業者に対しても活性化サービスを受ける権利と義務を付与する。
  • 日割り失業手当の延長が認められなくなったことが理由で当該手当ての受給資格を失った満55歳以上の高齢失業者に暫定的な失業対策として「シニア・ジョブ」が提供される。当該失業者に「シニア・ジョブ」を提供するのはコムーネの責務だが、コムーネが開設するシニア・ジョブ一件につき国庫補助金として年11万クローネが計上される。なお、国庫補助金とシニア・ジョブの通常賃金の差額分は、自治体が負担する。

5)部分年金制度

満60歳から65歳の勤労者で労働時間を短縮して就労することを希望する場合に減給分の一部を補填する従来の「部分年金制度」は、2007年1月1日から段階的に廃止される。ただし、2006年12月31日現在で満48歳以上の者については、依然として同制度の適用対象とされる。

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