急がれる高度技能人材の養成

カテゴリー:人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2006年7月

I. 中国ソフトウエア産業の発展

近年の中国の電子情報産業は、世界的にみても驚異的スピードでの発展を遂げている。その中でも特にソフトウエア産業は発展が最も著しく、2005年との比較で61%の生産拡大を実現している。情報産業部の発表によると、現在ソフトウエア産業の販売収入は3901億元の規模であるが、2010年には13000億元にまで拡大する見込みである。向こう5年、6年の間は年間30%以上の成長率を目標としている。

新華社によるとグローバル市場での中国のソフトウエア産業の伸び率は3.55%とインドや韓国よりも高い伸び率である。中国のソフトウエア産業は生産モデル、企業規模、人材確保が整備されれば、間違いなく世界のソフトウエア大国になりえると指摘する専門家も多い。中国科学院ソフトウエア国家プラニング研究センターの所長揚芙清氏は、「ソフトウエア産業は、高い技術を要する知識集約型産業である、中国のソフトウエア業界は中小企業が大半で手作業による生産方式が依然続いている。一旦工業化生産方式が普及すれば急速に大量の生産が可能となり、産業は拡大することが確実である。」と述べている。実際中国のソフトウエア産業は、1000人以上規模の企業は1%に満たず、50人以下の小規模企業が60%と大半を占めている。これに対してインドでは、1000人以上規模の企業が100社以上あり、平均でも従業員300人規模の工場がほとんどを占めている。

中国も計画を推進することで2010年には年商50億元以上の企業の出現が想定される。

ソフトウェア産業の振興の上で最も重要視されているのが人材の養成である。2002年全国の高校で35のソフトウエア学院が創設され、2004年には5.1万人の本科生が在校していた。今後5年間でソフトウエア専攻の学生は90万人増の250万人に達することが予想されている。

金蝶国際ソフトウエア集団総裁の徐少春氏によると、「中国のソフトウエア業界の発展はインドと競争力の点で同様ではない。むしろ中国はソフトウエアの川上から川下まですべてにおいて高い水準の製品を提供するべきであり、中国市場のおかれた立場から独自の研究開発を進め、中国市場に適合したソフトウエアのスタンダードを作り出していかなければいけない。」と強調する。

II. 高技能人材育成事業の強化促進に関する政府の意見

6月11日、中国中央弁公室と国務院弁公室は、「高技能人材事業の一層の強化に対する意見」を発表した。その内容は、「中央政府、国務院の人材事業強化に対する決定」と「中央政府、国務院のベンチャー・イノベーション能力の強化のための科学技術実施計画決定」の精神をうけ、経済社会の発展に重要な役割を果たす高技能人材の育成強化に対する政府の見解をまとめたものである。

人材強国戦略と高技能人材事業の推進による経済社会発展の重要性

社会経済の発展に伴い、高技能人材の数が製造業、加工、建築、環境等の伝統的産業と電子情報、航空技術などの新技術産業、現在サービス業の分野において圧倒的に不足している。21世紀初頭の20年間は、中国にとって重要な機会としての新局面である。そのような中、人材強国戦略を打ちたて、高度な技術と精緻な技能を有する高技能人材を育成し、高技能人材事業の強化することは、産業構造の強化につながり、中国の競争力とイノベーションを生み出す新たな能力の創出の源泉となるといえる。各級党政府にとって、労働、知識、人材、創造を重視する方針のもとで科学的人材観により、高技能人材育成事業の継続的に実現していくことが重要である。

これは、鄧小平の唱えた「三つの代表」の考え方による科学発展観のもとで、人材育成戦略、党による人材原則、すなわち職業能力の確立、技能の養成、効果測定、雇用、競争選抜、技術交流、表彰激励、市場流動性の確保、社会保障等の環境確保、さらに新しい観念に基づく政策とシステムについて高技能人材の開発の視点から基盤を整えていくことを意味している。

今後は、不足する高技能者の増員、優良技術技能型人材、複合技能型、知識技能型など高技能人材の育成に重点を置き、11次5カ年計画末には、高級技能水準以上をもつ人材が技能労働者に占める割合は25%以上とし、そのうちエンジニア、高級エンジニアが占める割合は5%以上をめざす。2020年には、高、中、初級技能労働者の比率は中等レベル国以上となることが期待される。

高技能人材の養成体制の整備と強化

企業と行政が主体となり、職業学院が基礎となって、学校教育と企業人材養成が緊密に連携することで高技能人材の養成体系を築き上げる。高等職業学院と高級技工学校、技師学院は職業訓練の基盤部門となることが期待される。民衆職業教育と訓練については、各種社会団体が高技能人材養成に貢献することが期待される。さらに企業と高技能人材養成校が共同でカリキュラム構成し、企業の職業訓練制度と高技能人材養成校のカリキュラムの産学協同による相互乗り入れを実現する。また、農民工に対しても新産業に適合する高技能人材の養成を行う。

高技能人材の養成に関しては企業の役割は大きい。特に大型企業(集団)においては、企業の生産発展と技術イノベーションの新たな需要を見極め、高度技能人材の養成計画を打ちたて、企業発展計画の中に高度技能人材の養成を組み入れる。

能力と業績、高技能人材の認定評価、競争選抜と技術交流システムの確立

高技能人材の評価制度の充実のため、職業資格証明制度を積極的に推進し、年齢、キャリア、身分に限らず、職業能力の向上を業務実績、職業倫理、職業知識の水準などのより評価するシステムを確立する。生産とサービスの職場では、特に基準の強化と秩序を重んじ、公平で構成な原則を持って、高技能人材の評価すべき業績内容を評価できる方法を確立する。積極的に高技能人材の評価制度を推進するために、職業技能検定、企業技能人材標準、院校職業資格認証、専門職業能力試験などを実施していく。特に条件の整った大型企業においては、積極的に高技能人材の評価に関する改革の試験的実施が期待される。

さらに、高技能人材については技術交流活動に積極的に取り組むことが期待される。公共職業紹介機構、人材交流機構、大企業(集団)、行政組織、職業学校、科技協会、技師協会、職工技術協会、職業教育訓練協会、高技能人材業務室等が技術交流の側面的支援をすることが期待される。

高技能人材のための表彰、奨励制度の設置とイノベーション能力向上のための支援

企業は高技能人材の積極活用により、持つ力を充分発揮させることが期待される。具体的には、技術的に難しい問題や製造工程の専門技術に関する改善等に創造的能力を発揮させる環境を整える必要がある。又、高技能人材がその能力を発揮できるように企業での生産に関わる重要な組織決定にも参加させ、経費面での支援をする必要がある。

企業に貢献し、業績を残した高技能人材に対しては表彰を積極的におこない、政府、企業もこれを奨励する。国家技能人材選抜表彰制度や中華技能大賞獲得者については企業も支持し、社会的支援との共同など多様な方法で経費を捻出し、表彰者を激励しつつ、さらに技能の発展に励むよう体制を整えなければならない。

財政投入の拡大と高技能人材のための基盤の整備

高技能人材の選抜、表彰、資格訓練、教材開発等の高技能人材養成事業のための充分な予算を確保する。国は、職業教育基盤整備事業予算において、職業教育発展計画にのっとり高技能人材養成のための職業学校への予算を確保している。企業は、職業教育経費として社員賃金総額の1.5-2.5%を教育訓練費として準備しなければならない。企業が社員の職業能力開発訓練能力を持たない場合、県レベルの地方人民政府は労働社会保障部門の統一組織訓練サービスの一環としてその社員のための経費を支出する。

高技能人材の養成のための調査研究をさらに重ね、法制度の確立や統計的需給予測の確立を図る。また、技師と高級技師の国家職業基準を修正し、職業技能検定の開発を行うことで、職業技能検定の認定内容を強化する。ニーズにあった高技能人材養成教材の開発もおこなう。

高技能人材の成長支援と指導体制の整備

組織を通じて、労働社会保障、発展改革、教育、科学技術、国防、財政、人事等各部門、および工会(労働組合)、共青団、婦連等人民団体の参加により、高度技能人材養成事業は協調的な機構において、広範なリーダーシップのもとで政策的協調を図りながら推進される。党委員会と政府は、統一した方針のもとで、組織の各部門をマクロ的に指導する立場にある。労働保障部門は協調の中での実行性の確保に尽力する。

III.高度人材養成に関する労働社会保障部の具体的事業方針

労働社会保障部の張小建副部長は人民日報のインタビューで、今後5年の職業訓練のあり方について、「5+1計画行動」、すなわち就業促進と再就職促進のための行動計画を明らかにした。具体的には、5年以内に新たにエンジニアと高級エンジニアを190万人養成し、700万人の新たな高級技能労働者を養成するというものである。また中級及び初級の技能労働者に対しても、養成を行い「城鎮技能再就職計画」のもとで5年以内に2000万人の下崗(リストラ)労働者の再就職を実現する目標であることを明らかにした。

また、「イノベーション能力促進計画」では、5年以内に200万の都市労働者に対して創業訓練を展開し、訓練の合格率を80%以上とすることをめざし、1人の起業に対して3人の就職を可能にするよう目標としていることを明らかにした。

さらに、「農村労働力技能職業計画」では、5年以内に4000万人の都市出稼ぎ工に農村労働者職業訓練を実施すること、「国家職業資格認定書情報ガイド計画」では5年以内に延べ5000万人に対して国家職業資格認定制度についての情報提供や手続の案内等に関する情報の提供サービスをほどこし、技能事業所への積極的アプローチにより、職業教育訓練ガイドラインに対する就業ニュースを提供することを明らかにした。

張副部長によると、現在中国の技能工は技師、高級技師を合わせその数は4%にすぎず、これに対して起業の需要は14%もあるという現実を公表。特に、長江デルタ、珠江デルタ地区の技能工不足は深刻であることから、労働者の技能の向上を図ることで需要と供給のミスマッチによる構造的失業を解消する必要がある。そのためにも、技能工を迅速に養成し、労働者の質的向上と就職、再就職を目的とする「5+1計画行動」の積極的実施が急がれることを強調した。

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