所得格差の拡がりが自己破産者の増加要因に
このほど発表された国家統計庁(NSO)の統計データでは、2006年第1四半期の平均所得の月額は306万2000ウォン、前年同期比4.2%の増加を示した。所得階層を5グループに分けた比較では、最低所得層と最高所得層の格差は単純計算で8.4倍となり、昨年同期の8.2倍を若干上回った。また、各所得階層の前年同期比は、最低所得層の2.4%増に対し最高所得層は4.1%増と、格差の拡がりが見られている。
こうした所得格差の拡がりが、近年韓国で急増する自己破産者の原因の一つとなっているとする記事を英字紙The Korea Timesが報じている。
同記事では、所得格差の拡大により、自己破産を申請する債務者が増加していると指摘する。昨年、地方裁判所に自己破産申請をした個人の数は3万8773人に上り、一昨年の1万2317人から3倍以上の増加を示した。自己破産申請者数は、近年急激に増加しており、2000年に329人であったものが、2001年672人、2002年1335人、2003年3856人となっている。
自己破産申請者の増加は、景気後退による債務不履行者の増加が要因とみられるが、自己破産者に関するヒュンダイ研究所の最近のレポートでは、景気後退だけでなく貧富格差も大きく関係していると分析している。同レポートでは、特に低所得層の家庭が家計のやり繰りに苦慮しており、借入れた銀行ローンの返済が滞る世帯が多くなっていると指摘する。
韓国では、1962年から自己破産に関する申請条件を法律で規定しているが、実際の適用があったのは97年の経済危機のときの申請が初めてであった。自己破産申請者は資産整理の後、債務支払いを免除される。かつて、債務者の多くは自己破産を不名誉なことと受け止め申請までに至る者は少なかったが、最近は申請者が増加しており、モラルハザードの懸念が高まっている。
一方、裁判所は、自己破産の申請を認める傾向にあり、自己破産の申請による債務不履行者の増加に対し、自己努力で債務を弁償しようとする者の数は減少傾向にある。このことは「信用相談回復サービス」(債務不履行者への相談援助を通じ債務弁済を支援するために2002年に開設された機関)の登録者数の減少からもわかる。同機関の信用回復プログラムに登録された者の数は昨年19万3000人に上るが、一昨年の28万7352人からの30%以上の減少となっている。
こうした事態に対し、専門家は「借金を無効にするために自己破産を選択するようなモラルハザードをくい止めるためにも、関係当局は自己破産申請に一定条件を付けるべきであり、また債務者への教育と相談が重要である」と指摘している。
参考
- 国家統計庁(NSO)発表資料
- 5月16日付The Korea Times 紙
2006年6月 韓国の記事一覧
- 所得格差の拡がりが自己破産者の増加要因に
- 非正規労働者保護法案、またも国会可決ならず
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