2005年の労働者海外派遣 目標の7万人を突破

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2006年5月

ベトナム労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)の統計によると、2005年に海外で就労するベトナム人の総数は約40万人、海外に派遣された労働者は7万594人であったことが明らかになった。これら国外の出稼ぎ就労によってもたらされる外貨獲得額は年間15億ドルに上る。

労働者輸出の歴史

ベトナムにおいて労働者の海外派遣が開始されたのは1980年にさかのぼる。当時は東欧、中東、アフリカなど社会主義国との二国間協定の枠組みで実施され、1991年までの11年間でのべ29万5999人の労働者が派遣された(表1)。その後、派遣をあっせんする企業(労働者派遣会社)を許可制とし、労働者派遣会社が海外での就労を希望する労働者から手数料を取る方式に方針を転換した。(注1)

現在は「2005-2010年労働者輸出計画」の下、年間の派遣者数について数値目標を設定し派遣促進に取り組んでいる。2005年の派遣者数は7万594人で、年度目標である7万人を突破した。送り出し先国について見ると、最も多いのがマレーシア(2万4605人)で全体の7割を占め、台湾(2万2784人)、韓国(1万2102人)、日本(2953人)と続く。政府は2006年の派遣者数を前年より1万人多い8万人と設定しており、特に高技能労働者の派遣に力を入れている。これに伴い、国内での職業訓練プログラムの拡充を行なっている。

進む法整備焦点は労働輸出法

労働者輸出に関する法整備も進んでいる。2005年11月には外国で就労するベトナム人労働者の管理に関する政令(141/2005/ND-CD)が公布されたほか、2006年5月中には労働者輸出法案(Law for Labor Exporting)が国会承認される見込みである。

法整備が進んだ背景には、派遣者数の増加に伴い様々な問題が顕在化したことが挙げられる。とりわけ労働者派遣会社をめぐるトラブルが後をたたない。労働者派遣会社が約1万ドル程度の手数料(および保証金)を労働者本人の給与から徴収する際に不正が多発している。このため法案には在越の労働者派遣会社と外国会社との派遣契約の締結を本社のみが行なうことができる旨の規制が強化されており、支社レベルでの契約は無効になるほか、募集、手数料、保証金の受取りにも制限が課される内容となっている。

一方、台湾では契約期間中に逃亡するベトナム人労働者が後をたたないことから、逃亡した労働者本人だけではなく国内の親族などに罰則を課すといった罰則規制の強化も挙げられている。他に派遣前の職業訓練、オリエンテーションの受講が義務付け、海外派遣労働者のための基金の設立などが盛り込まれている。

H-2Aビザに基づく派遣も開始

2005年9月、アメリカのH-2Aビザ に基づくベトナムから初めてのゲストワーカーの派遣が実施された。H-2Aビザは、季節農業労働者が一定の期間就労することを許可するもので、農業部門において多数の外国人労働者がゲストワーカーとして就労している。同ビザの有効期間は1年間で最長3年まで更新可能、発給にあたって高度な技能は必要とされない。

今回の派遣は、ロス・アンジェルスに拠点を置くグローバル・ホライズン(Global Horizons)社が在ベトナムの労働者派遣会社Airsercoをカウンターパートとして実施したもの。ゲストワーカーとして派遣された9名のベトナム人労働者はGH社が所有するハワイのマカダミアナッツ農園で働くことになる。契約期間は1年間。1日10時間、週6日、時給9.75ドルでナッツの収穫作業に従事する。

大幅な増加の可能性も

GH社はワシントン州、カリフォルニア州などの農園にタイ、フィリピン、メキシコなど全18の国々からの労働者を派遣する事業を行なっている。今回の派遣の際にGH社が出した条件は(1)3年以上の農業経験(2)45歳未満(3)既婚、の3点のみで、アメリカの文化に関する知識や英語力は必要とされない。一方、雇用主すなわち農園主は、労働者の渡航費用および住居を用意する必要がある。GH社は今回のベトナムからの派遣が成功に終った場合には、規模を大幅に拡大し、千人単位での派遣を実施する予定であると発表した。在ベトナムの労働者派遣企業も派遣先として従来のアジア中心からアメリカ、オーストラリアへの進出を視野にいれていることから、今回のケースがモデルケースとして注目されている。

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