鉄道事故防止とタイ人労働者問題
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カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2006年5月

頻発する鉄道の悲劇

台湾では、短期間に大規模な事故が4件発生し、乗客・乗員8人が死亡した。このため、交通部の台湾鉄路管理局では、局長が責任を取って辞任している。

東部の花蓮県では、3月10日午前1時ごろ、線路上で作業中の保守作業員5名が急行列車にはねられて死亡した。3月11日には、台北県のShihji駅で、高齢の男性が通勤列車にはねられ、頭を打って死亡した。駅員の証言によれば、この68歳の老人は、当時、警告ライン上に立っており、勤務中の警備員が警笛を鳴らしたが、後退できなかったということである。その直後、この男性は、列車にはねられた。3月23日には、鉄路管理局の切符係員が、首を吊って死亡しているのが発見された。この男性のベトナム人の妻は、以前、鉄道のサボタージュの際に死亡しているが、現場に残された遺書によると、この男性の自殺の原因は、この男性が妻の死に責任があると考える検察官とメディアの圧力に耐えきれなかったためであるということである。

こうした鉄道事故は、労働者、乗客のいずれにとっても、安全管理上、重大な問題となっている。特に、3月10日の事故では、鉄道労働者が、線路上で作業中に死亡している。

花蓮の鉄路管理局工事部門によれば、5名の作業員が絶縁体のスペーサーを交換するため夜中に駅に入ったとき、駅の係員は現場近くの信号機が故障しているとの報告を受けていた。

地元紙の報道によれば、関連規則では作業開始前に半径500~600メートル地点に監視員を配置するか、警告標識を設置するよう規定しているにもかかわらず、同部門では明らかにこれらの規則が守られていなかった。また、急行列車は、作業員5名をはねたとき、時速105キロで走行していたと言われているが、同工事部門の指摘によれば、この列車は北廻線の東区間を走行する予定であったが、同区間は盛土工事のため閉鎖されていた。

行政院労工委員会は、労働衛生安全法上の違反があったとして、鉄道当局を直ちに非難している。同法の規定では、雇用者は、線路上、またはその近辺で作業を行う場合、予め接近してくる列車に通知し、警告標識を設置し、管理者を派遣するものとしているが、鉄路管理局では、これらを全て怠っていた。事故の発生原因は、鉄路管理局が鉄道工事の標準手続を踏まなかったことにあると、労工委員会では述べている。

鉄路管理局のように重要な交通機関が、標準手続を無視し、遵守しなかったこと、最近になって事故が連続して発生している事実は重い。今、台湾国内では、労働者・乗客の安全を守るという観点から、鉄路管理局、交通部、また、労工委員会もが、問題を直視し、品質管理システム全体を見直し、原因を分析して、有効な改善策を実施する必要があることが再認識されている。

給与条件をめぐるタイ人労働者のストライキとブローカーに対する反訴

台湾南部の建設現場では、約1000人のタイ人労働者が、給与をめぐる使用者側との紛争で3月13日にストに入り、スローガンを唱え、拳を振り上げながら道路を封鎖した。

ストライキを行った労働者達は、台湾の大手エンジニアリング・コンサルティング会社、台湾中鼎工程集団(CTCI)に雇われ、麦寮工業地帯の台塑関係企業第6ナフサ分解プラント(台湾初の民間石油精製所)の拡張プロジェクトで働く労働者たちである。同工業地域には、このタイ人労働者を含め5000人強の労働者が働くが、ソウルを拠点とするサムスン・コーポレーション等が雇用していた。

報道によれば、ストライキのきっかけは、CTCI以外の会社では給与から食費、仲介手数料等の経費を徴収していないにもかかわらず、CTCIの支払う給与は、他社が雇用したタイ人労働者の給与よりも低くなっていることを、一部の労働者が知ったためだとしている。

ストライキに直面した使用者側では、サムスンが雇用した労働者の給与が他の労働者よりも若干高いことは事実であるが、これは、サムスンが労働者に食費の支払いを求めていないためであり、またサムスンの労働者が従事しているプロジェクトとCTCIが実施しているプロジェクトとでは仕事の内容が異なると説明している。

現行の労働基準法では、台湾側使用者は、外国人労働者に限り、月額4000NTドル(123米ドル)を超えない範囲で、給与から食費を徴収することができる。今回の事例では、食費、仲介手数料など、CTCIが請求した経費は、食費2500NTドル(77米ドル)を含め、4300NTドル(132米ドル)に上った。

ストライキは2日間続いたものの、結局使用者側が、月間22日以上勤務する者に対しては、仲介手数料を請求しないことに同意したため、平穏に終結した。

2005年8月には、台湾南部の都市で、華磐管理顧問公司(Huapan Manpower Consulting)管理下のタイ人労働者約300人が、劣悪な生活環境に抗議して建設現場を破壊し、機動隊と衝突したため、台湾中が驚愕した事件は記憶に新しい。

この抗議活動の結果、労工委員会の陳菊主任委員は辞職し、同管理公司が宿舎の食事と生活条件の改善を約束したため、タイ人労働者は、最終的に、職場に復帰した。

この争議の結果、華磐管理顧問公司は、8月時点では賠償請求しないことを誓約していたにも関わらず、7か月後の前年8月の暴動抗議による損害が継続しているとして、タイ人労働者14人を相手に民事訴訟を起こし、賠償金として1967万NTドル(58万5100米ドル)を請求した。この提訴に対して、労働者の一部は記者会見を開き、華磐公司が労働者を奴隷同然に扱っているとして反訴すると発表した。明らかに、この会見は、台湾国際労工協会、マスメディア、労工委員会、高雄労働局を意識したものであり、華磐に反省を促すものであった。同労働局は、1月に外国人労働者支援策を協議した際に制定した決議に基づき、労働者のあらゆる訴訟費用を負担すると表明した。

こうした強い圧力を受けて、最終的に、華磐管理顧問公司は、賠償請求額を変更し、1967万NTドルから1NTドルに減額すると発表した。

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