台湾における女性の地位と待遇
―政府発表報告書から

カテゴリー:労働条件・就業環境

台湾の記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年5月

伝統的な役割に縛られる台湾女性たち

内政部と婦女権益促進発展基金会が3月に発表した男女平等に関する年次報告書によると、台湾では依然として多くの人が、女性の社会的役割に関して伝統的な考え方であることが明らかになった。

台湾における2005年の出生数は、女児100人に対して男児の比率が109人であった。は国連における通常の男女出生比105~106対100であることから、この数字から台湾においては男性の比率が高いといえる。

同報告書によると、台湾では家事の75%を平日、週末とも女性が行っていることがあきらかになっており、これに対して同基金会は、男性もさらに家事の責任を分担し、女性がより多くの自由と余暇を享受できるようにすることを求めている。さらに、台湾の労働市場での女性の参加率も相対的に低いといえる。2004年の15歳から64歳までの就労している女性の人数は427万人、上記年齢層の女性の47.7%であった。この数値は、日本48.4%、フランス49.2%、ドイツ49.3%、韓国49.7%、香港51.6%、シンガポール55.3%、米国59.5%と比較しても低い。

さらに同報告書では、収入に関して女性は男性より不利な状況にあることを指摘している。2004年の平均月収は、男性が4万7386NTドル(1467米ドル)であったのに対して、女性は3万7104NTドル(1148米ドル)であった。おそらく、この理由の一つは、女性は、結婚後に退職する場合が多いためであり、2003年の場合をみると、勤労女性の55%近くが結婚後に退職している。内訳は、28.7%が結婚を機に退職しているものであり、15.5%が出産を理由に退職しているというものである。

女性の社会進出の現状

同報告書では、女性が、企業の管理職・取締役、議員、公的機関の長となるケースは極めてまれであることが指摘されている。実際に企業の管理職・取締役、議員、公的機関の長の83.6%は男性である。一方、女性はボランティアの分野で活躍が目立ち、ボランティア従事者の68.8%は女性であると同報告書は伝えている。

教育機会の平等に関しても、修士号、博士号の取得者が、女性100人に対して、男性は、それぞれ159人、296人であることから、婦女権益促進発展基金会はその改善の必要性を強調している。

女性の家庭内での状況について家庭内暴力に関しては2004年に性的暴行の被害にあった女性は4130人、家庭内暴力の被害にあった女性は3万8881人と報告されている。性的暴行の被害者の半数近くは12歳から17歳であり、被害者の3%は5歳以下、6.6%は6歳から11歳であった。

同報告書は、台湾のGEM(Gender Evaluation Methodology;一国における女性の権利の一般的指標)は0.668、世界で19位であると結論付けている。この数値は、シンガポール、日本、韓国よりは高いものの、米国、オーストラリア、同指標で1位のノルウェーよりは低い。

同報告書の結果を受けて、内政部では、政府には女性により優しい環境を整備することなど、依然として多くの課題があることを指摘しており、こうした目標を達成するための一歩として、公的施設に、授乳室と女性用公衆トイレを増設することを計画している。

内政部は、立法院に対しても2006年度予算において女性の権利を促進するための費用の増額(1億6700万NTドルの増額)することを求めており、大陸からのいわゆる外国人花嫁を支援するための資金としては30億NTドル(9200万米ドル)の予算がすでに措置されている。

企業における女性の処遇

3月に公表された公式調査によれば、勤労女性の数は、過去4年間で増加したものの、女性労働者への対策においては、依然改善が必要であることが指摘された。
同調査は、行政院労工委員会が、4年前に台湾で男女雇用平等法(両性工作平等法)が施行された国際女性デーに合わせて、男女平等の取り組みの進捗を評価することを目的として実施したものである。

男女雇用平等法の規定では、従業員250人以上の労働者のいる事業所には託児所の設置が義務付けられているが、調査結果によると同規定を遵守している企業は、対象企業のわずか38.1%にすぎなかった。

同法はまた、企業に対して、生理休暇、流産休暇、出産育児休暇を与えるよう求めているが、生理休暇を認めている企業は27.2%にすぎず、また、流産休暇、又は出産後の妻に付き添うために夫に育児休暇を認めている企業は50%未満であった。企業の5%では、妊婦の出産休暇が依然として認められていない。

また、母親が就業時間中に授乳することは行政指導で奨励しているのみであるが、実際に授乳室または保育室を設置している企業、団体は6.6%に過ぎない。

企業では、依然として同法の規定の多くの実施が遅れているものの、成果が見られたものもある。仕事を持つ女性の数と、労働力における女性の労働参加率は、過去4年間で、ともに上昇した。

同調査によると、仕事を持つ女性の数は2005年には419万人となり、2002年の390万7000人から7.2%増加した。女性の労働参加率も、同期間に、46.59%から48.12%に1.53%増加したことが明らかになっている。さらに、企業の管理職、取締役の総数に占める女性の割合も、微増ながら14.6%から16.5%と増加傾向にはある。

全体としては、男女雇用平等法により、雇用における男女の平等に向けた目標はある程度促進されてはいるものの、現状には、依然改善を要する部分が大きい。

参考レート

2006年5月 台湾の記事一覧

関連情報