EU域内の労働者の移動の自由に関する経過措置が第2段階へ

カテゴリー:外国人労働者

EUの記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年5月

2004年5月の欧州連合(EU)拡大以降、新規加盟国から旧加盟国への労働者の自由移動を制限してきた経過措置が、5月1日から第2段階にはいった。スペインやポルトガル、ギリシャ及びフィンランドは制限を撤廃する。これに対しドイツとオーストリアは、第2段階の終了する2009年までは制限を継続することを決定した。また、ベルギーやフランス、オランダ及びデンマークは今後3年間のうちに経過措置の見直しを検討するとしている。(関連する情報は2006年2月及び2005年10月を参照)

2004年5月にEUは新規加盟国10カ国を迎えて25カ国に拡大した。EU加盟条約(2003年4月16日署名)は、新規加盟国から旧加盟国への労働者の移動の自由について最大7年間の経過措置を認めている。この措置は開始から2年、3年、2年の3段階に分けられている。この第1段階の2年が2006年4月で終了することになった。条約は加盟国に対し、第1段階の期間が終了するまでに、第2段階で制限を継続するかあるいは撤廃するなどの方針を欧州委員会に通知するよう求めていた。

各国が欧州委員会に対して、3月7日から4月28日の間に通知した方針の概要を示したものが下記の表である(注1)。これまで制限を設けていなかったイギリス、アイルランド、スウェーデンに加えて、スペイン、ポルトガル、フィンランド、ギリシャが制限を撤廃することになった。ベルギーやデンマーク、ルクセンブルグ及びフランスは今回の決定では制限を撤廃しないものの、第2段階期間中の状況を見ながら制限の撤廃を検討していくとしている。その一方で、新規加盟国と国境を接しているドイツとオーストリアは、2009年4月30日の第2段階終了まで制限を撤廃する考えはないことを表明した。

実際、労働者の移動は各国の労働市場にどのような影響を与えたのか。公表されている統計によれば、旧加盟国の労働市場への影響は肯定的な見方が強い。2月8日に欧州委員会によって発表された報告によれば、中東欧のEU新規加盟国(EU10)からEU旧加盟国(EU15)への労働者の自由移動は、概ね積極的な影響を与えている。ほとんどの加盟国において予測よりも労働移動が少なかったことを示している。その上で報告書は、EU 10の労働者が労働力不足を緩和し、欧州の良好な経済実績に貢献していると分析する(注2)。

また、イギリスの内務省大臣チャールズ・クラーク氏は4月5日、「EU新規加盟国の労働者はイギリス経済を発展させている。…さまざまな産業の労働市場を支えている」と発言した。イギリス政府の統計によれば、2005年末の時点で約30万人の労働者が新規加盟国から入国して、年間約5億ポンド(7億1500万ユーロ、8億7000万ドル)の経済的な貢献をしている。政府はこうした労働者のほとんどが若年者であり、労働市場のギャップを埋める役割を果たしているとしている(注3)。

このようなデータを後押しするような形で4月5日、欧州議会は労働市場をさらに開放すべきであるとの議決を採択している(注4)。

欧州委員会のウェブサイトリンク先を新しいウィンドウでひらくに掲載されている表を参考に作成

関連情報