高齢化に伴う費用の増大、さらなる改革が必要

カテゴリー:高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2006年3月

急速な高齢化に直面している欧州連合(EU)諸国は、改革努力を加速する必要に迫られている。EUの財務相が欧州委員会および経済政策委員会と合同で作成した報告書は、2050年までの全加盟国の経済および財政費用に関する新しい詳細な予測を提示した。人口動態の問題の規模は計り知れない。2010年のベビー・ブーム世代の退職および寿命の持続的伸長により、欧州では2050年までに勤労世代の2人で1人の高齢者を支えなければならなくなる(現在は4人で1人を支えている)。政策を変更しない限り、2030年までにEUの潜在成長率は現在のほぼ半分に低下する。公的財政は、年金、医療および長期支出の増大による深刻な重圧に晒されている。挑戦に直面するいくつかの加盟国は、早期退職制度の権利の縮小、年金制度の改革を実施した。報告書は、このような改革が、退職年齢の効果的な引き上げおよび将来の財政支出圧力の管理の両面で、成果を上げていることを示している。

欧州委員会のホアキン・アルムニア経済通貨問題担当委員は、「人口高齢化の過程は反転しえず、繁栄と持続可能性の帰趨は政府の手に握られている。いつくかの加盟国は、将来世代に過度の負担をかけることを避けるために既に改革を実行した。しかし、自己満足に陥っている余裕はない。加盟国、とりわけ公的財政の長期の持続可能性が危機に瀕している諸国においては、集中的な改革努力の機会を利用すべきである。これを実行しないと、2人の労働者で1人の高齢者を支えなければならない時代において、EU加盟国の多くが費用を負担し得えなくなる。改革の遅れは、費用と調整に伴う痛みの増加に繋がり、我々の子供や孫にとって不公平な事態となる。公的財政の持続可能性危機に加えて、相当に低い経済成長予測は、リスボン戦略を実行し、福祉制度を現代化する必要性を赤裸々に予告している」と述べた。

報告書のポイントは以下のとおり。

  • 欧州の人口は徐々に減少し、2050年には高齢化が顕著となる。EU25カ国の人口は、2010年に4億5700万人から4億5400万人に減少する。勤労世代(15~64歳)の人口が2050年までに4800万人(16%)減少する一方、65歳以上の高齢者人口は5800万人(77%)急速に増加すると予測されている。
  • EUの潜在成長率は低下する。EU25カ国全体の年平均潜在GDP成長率は、2.4%(2004~2010年)から1.9%(2011~2030年)に下がり、さらに1.2%(2031~2050年)まで低下すると予想される。
  • 高齢化は、公的支出の顕著な増加に繋がる。EU全体では、2005年~2050年に、年金、医療費を中心に公的支出が約4%増加する。公的支出圧力は、とりわけユーロ圏諸国で強く、2005~2050年の年金支出は、ポルトガル(9.7%)、ルクセンブルグ(7.4%)、スペイン(7%)、アイルランド(6.5%)、ベルギー(5.1%)で増加する。
  • 今回初めて検証が行われたEU新規加盟国(特殊事情のあったポーランドを除く)の高齢化に伴う支出は、GDPの5%以上増加する。2050年までに年金支出の顕著な増加が予想されるのは、ハンガリー(GDPの6.7%)、スロヴェニア(同7.3%)、キプロス(同12.9%)などである。
  • 前回高齢化に伴う予測が実施された2001年以降実行された改革により、EU15カ国の半数において公的年金支出の増加が予測よりも小さかった。年金改革はまた、平均退職年齢の引き上げおよび高齢者の高い就業率の上昇に導くと期待される。

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