全労働者にメンタルヘルス診断の受診を

カテゴリー:労働条件・就業環境勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2006年2月

2005年12月27日付ニューストレイツタイムス紙によると、マレーシア政府は、2006年からマレーシアの公共・民間両部門の全労働者に、年1回以上のメンタルヘルス診断の受診と血液・尿検査を受診させることを雇用主に義務付けると発表した。この制度導入の目的は、労働者の生産性や精神状態に負の影響を与える恐れがあるとされる、うつ病又は「燃え尽き症候群」の早期発見である。

診断結果は、雇用主が労働者に対し対策を講じる必要性の有無を判断するのに利用することができる。また血液検査や尿検査は、精神疾患、HIV/エイズ、麻薬中毒、アルコール依存症他の疾病を患っている労働者の数の把握に役立つと政府は見込んでいる。人的資源副大臣によれば、診断の定期的実施が公共・民間両部門における職業意識とサービスの向上につながることを政府は期待している。

副大臣は発表の中で、健康診断の適切な実施を確保するため、すべての職場に労使からなる安全衛生委員会を設置しなければならないと述べた。安全衛生委員会の設置条件は、労働安全衛生法(第30条)に定められており、現行では40名以上が雇用されている職場、または労働安全衛生局長が指定した職場では、雇用主が設置することになっている。同法には、労働者に対する一般的義務として、雇用主は可能なかぎり、労働者全員の就業時の安全、衛生および福祉を確保する義務を負うものと定められている。従って、健康診断実施の義務を履行しなかった場合、雇用主は5万リンギ以下の罰金もしくは2年以下の禁固に処せされるか、又はその両方を科される。

12月28日付マレーメール紙によると、官公労連(Cuepacs)とマレーシア労働組合会議(MTUC)は政府の発表に反発し、論理的根拠と客観的調査結果の提示を求めた。これに関連して、制度を実行に移す前に、マレーシアにおけるメンタルヘルスの実態について詳細に調査を行い、全ての関係者と協議を行うよう政府に対し要請している。

両労働団体の幹部は、この制度について、(1)診断結果で問題があると指摘された場合、労働者の雇用が危機にさらされる(特に民間部門の場合)、(2)経費負担があいまい――などの問題点を指摘するとともに、労働者に一律にメンタルヘルス診断を課すのは不当だと述べている。さらに、官公労連は、政府機関にはカウンセリングの窓口が設けられており、この問題に対応するには、対象者にカウンセリングを行う方が効果的であるとの見解を示した。

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