07年EU新規加盟のブルガリア、ルーマニアからの労働者受入れを制限

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2006年12月

2007年1月にEUへの加盟を予定しているブルガリアとルーマニア出身労働者の受入れについてイギリス政府は制限する方針を明らかにした。

制限の概要-明暗分かれた東欧諸国-

イギリスは04年5月のEU第5次拡大の際、アイルランドやスウェーデンと並んで労働市場を開放した数少ない国のひとつ。イギリス政府は東欧8カ国(Accession 8:A8)からの移民労働者向けに労働者登録計画(WRS)((注1))を新設し、受入れを開始したところ政府予想(年間1万4000人)を大幅に上回る東欧からの移民がイギリスに流入した(表1)。

07年1月のEU第6次拡大を控え、加盟予定のブルガリア、ルーマニア(A2)に対して第5次拡大の時と同様に労働者登録計画を適用するのか、あるいは何らかの制限を設けるのかが注目されている。06年10月リード内相が示した方針では、前回とは異なって労働者登録計画は適用しないものとみられている。但し、単純労働については既存の受入れ制度(季節農業等労働者制度(SAWS)(注2)、業種別割当計画(SBS)(注3))の枠をA2出身の移民に優先的に割り振り、年間2万人程度を受け入れるという。

加盟時期の違いによって異なる英国の対応について、ブルガリア政府は「A8と同様の扱いを望む」としたほか、チェコも「旧加盟国の動きはEUの経済発展を阻むものだ」と発言、イギリスの対応を批判した。

移民の増加に社会不安を感じるイギリス国民

英紙フィナンシャル・タイムスが行なった世論調査によれば「移民は経済に悪影響を与えている」「A2からの移民がイギリス経済に打撃を与える」と考えるイギリス人がそれぞれ50%、46%に上り、移民がイギリス経済にプラスの影響を与えると主張するイギリス政府や欧州委員会の見解と大きな隔たりを見せている。(注4)

イギリス経済は1992年の下半期から景気拡大を続けており、移民の受入れに比較的寛大な姿勢を見せていたが05年以降欧州経済地域外からの労働者の受入れについて規制を強める方向に政策転換した。また05年7月に発生したロンドン地下鉄同時爆破テロ以降、国境管理強化の重要性が増しており、今回の世論調査の結果は、移民の増加による社会不安の高まりをあらわしたものといえる。

東欧諸国移民に対する社会統合施策の必要性高まる
労働者登録計画に基づいて入国する東欧からの移民はロンドンなどの大都市に限らず、イングランド中部などの地方都市に分散し、さまざまな影響をもたらしている。移民受入れの経験に乏しい地方都市にとって東欧出身の移民への対応には課題が多いのが実情。中でも問題になるのが住宅や子供の教育だ。

労働者登録計画に関する統計によれば、04年に家族を帯同していた移民労働者は全体の4.9%に過ぎなかったのが、2年後には9.3%に増加している。これに伴い帯同する子供の数も2470人から5885人に倍増している。労働者登録計画による就労の場合、流入する移民数を地方都市がコントロールすることは困難なため、中央政府による支援を求める声が高まっていた。これを受けてリード内相はA2を対象とする受入れ制限の発表に関し、移民の流入が地方都市にもたらす問題についてコミュニティ・地方自治省(DCLG)と連携し対処するとしたほか、子供の教育については教育技能省(DfES)が移民の子供を対象とする教育向けのファンドを設立し、40万ポンドの予算を組むとしている。

受入れの現場では―レクサム市の場合―

北ウェールズのレクサム市にあるビクトリア小学校では、英語を母国語としない児童の数が全校生徒に占める割合は05年時点で5%だったものが06年では11%にまで上昇した。これら児童の出身国ではポーランド人の子供が最も多く、06年度の新入生児童70名のうち約50名をポーランド人が占めていた。同校ではポーランド語を話すことのできる教員の配置を行なうなどの措置を取っている。

表1

出所:雇用年金省“Accession Monitoring Report May 2004 - June 2006” 2006

参考レート

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