病気や労災の予防プロジェクトに30億クローネを計上

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  • 国別労働トピック:2006年12月

政府(自由党、保守人民党)及び社会民主党、急進自由党、デンマーク国民党の野党は2006年6月に福祉国家の維持・開発を目的とした「福祉改革案」に合意したが、同改革の一環として「予防基金(注1)」が設立された。同基金にはすでに原資として30億クローネが計上されているが、向こう数年間にかけて公的機関及び民間企業での肉体的・精神的負担を軽減し、病気や労災の発生を予防することを目的としたプロジェクトに同基金から補助金が支給される。

2007年度の予算

2006年11月2日、同予防基金の2007年度予算が公表され、ルーティーンワークを解消することや作業の手順を変え身体的な負担を軽減することを目指したプロジェクトに12億3400万クローネ、リハビリ及び社会復帰対策の改善を目的としたプロジェクトに4500万クローネ、喫煙、飲酒、肥満に関するプロジェクトに2000万クローネを補助金として支給することが決まった。

1.ルーティーンワークの排除や仕事の手順の改善を目的としたプロジェクト

高齢者を対象とする在宅ケアやプライイェム(注2)で働いている職員は、身体的及び精神的な消耗がより顕著で、欠勤率が高いことが様々な調査により明らかにされている。

そこで、在宅ケア職員や施設職員の身体的・精神的消耗を軽減するための新しい作業手順、方法論、アプローチの開発を目指した各種プロジェクトに補助金が支給される。さらに、自治体間や施設間において欠勤率(病欠率)が異なることも知られているが、その原因及び関係性の解明を目指したプロジェクトに対しても補助金が支給される。

また、国家公務員の欠勤(病欠)に関する統計によると、国家公務員の年平均欠勤日数は7.9日だが、刑務所職員の年平均欠勤日数は15.9日と約2倍の数値を示している。刑務所の職員には精神的プレッシャーだけでなく身体的なプレッシャーがかかり、社会心理的にも多大なリスクを抱えていることがさまざまな調査から明らかになっている。このことから同分野の労働環境改善を目指したプロジェクトに対しても同様に補助金が支給されることが決まった。

総額で12億3400万クローネに上る予算の内訳は、(1)在宅ケア分野及び入居施設に関するプロジェクトに6000万クローネ、(2)刑務所分野の労働環境改善プロジェクトに1000万クローネ、他の身体的消耗が大きい分野(業界)におけるプロジェクトに5300万クローネとなっている。

2.リハビリや社会復帰対策の改善を目指したプロジェクト

リハビリや社会復帰サービスは地方自治体が所轄するサービスだが、例えば自治体が外部の専門家や事業者などと協力し、新しいリハビリの手法・方法の開発を目指したプロジェクトに補助金が支給される。例えば、通常は病院やクリニックで行われているリハビリや治療を職場に移し、労働時間内に職場で理学療法や作業療法の治療を受けることで、早期の職場復帰を実現することを目指したプロジェクトなどが考えられる。

デンマーク国民健康研究所が2004年に実施した調査によると、長期欠勤理由の43%が腰痛、間接リューマチなどを筆頭とした筋肉・骨格疾患であること、また筋肉・骨格疾患が早期年金(障害者年金)支給の最大の理由であることも明らかになっている。そこで、長期欠勤者の迅速な職場復帰を支援する新しいリハビリ・プログラムの開発を目指したプロジェクトや、長期欠勤リスクを抱える勤労者が体を鍛えことで仕事を保持することを支援するトレーニング・プロジェクト等に対して補助金が支給される。

総額で4500万クローネの予算の内訳は、職場復帰あるいは職の保持を目指した新しい機能維持訓練に3000万クローネ、精神的・身体的障害を持つ人の社会復帰を促進するためのプロジェクトに1500万クローネが計上されている。

3.喫煙、飲酒、肥満に関するプロジェクト

喫煙、飲酒、肥満が体に与える影響に関する人々の知識・意識を高めることを目指し、職場、団体、自治体が実施する斬新的なキャンペーン活動やプロジェクトを支援する。特に喫煙者が多い職場・業界で労働組合と協力しながら推進する禁煙プロジェクトなどに補助金を支給する。

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