最近の教育事情

カテゴリー:若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2006年12月

ブラジル地理統計資料院(IBGE)2005年度の調査によると、15~25歳の若者の37%は、基礎教育8年中退という状況で労働市場に参加しているという。GDPの低迷、長期化した高失業率、国際競争力の低下に対して有効な職業能力開発対策がとられていない結果である。この調査をさらに分析した民間の社会・労働研究所は、現在の教育に対する投資を強化する以前に、過去の教育投資不足の清算から取り組む必要があると警告した。

1990年代からブラジルは基礎教育の普及をはかり、大体全国のどこでも無料で公立学校の基礎教育は受けられるようになった。しかし教育の質は改善されておらず、真剣に子供の教育を考える家庭では、公立学校を避ける傾向がある。義務教育は、生徒数を増加させ政府の教育行政の成果を強調する方に主体が置かれ、教育が将来国家を担う若者を育てるという理念に基づいていない。これからの労働力として最も期待されるべき若者の37%が、義務教育中退という現状にあり、37%のうち23%は社会に出ても再教育を受ける事もなく、就労の機会にも恵まれていない。

若者の就労をめぐる環境は厳しい。企業のほとんどは基礎教育終了を雇用の条件にしており、中退者は労働市場から除外されている。現在就労者全体の平均学歴は6.6年。教育関係者は就労人口全ての学歴を向上させる事は困難だと考えており、少なくとも25歳以下の労働力を義務教育卒にする目標を立てるよう提案している。しかし、教育関係予算は年々削られている。政府は財政赤字対策と政治支出拡大要求圧力に押され、国民へのサービス提供部分を削減しており、義務教育内容が好転する期待は薄い。

公式データでは学齢期にある児童の95%以上が通学している事になっているが、実際は37%にも達する若者が、就労上最低必要条件となる義務教育も終えられないまま社会へ放り出されている。義務教育だけでなく、中等教育、高等教育ともに、現在の国際社会の標準に達していない。25~29歳層を見ると、8%のみが大卒、9%は大卒中退または在学中となっている。この9%が全部大学を卒業したと仮定しても、社会活動の中心を担うべきこの年齢層の17%が大卒となる程度に過ぎず、就労者全体の16.4%が大卒と言うメキシコよりも、はるかに遅れていることになる。しかも、ブラジルは1995年以降、急に大学数を増加させており、1995年の大学生180万人は2005年に490万人と175%増加した。大学生が増加したのはごく最近のこと。

国家教育審議会のエヂソン・ヌーネス会長は、発展を遂げている途上国は大学で先進技術教育を教えているが、ブラジルは「未だに黒板とチョークで演説の巧さの技術を教えているだけ」と、時代遅れの教育を指摘している。技術分野の教育に従事する関係者は、外資の投資を促進し経済発展を図る上で技術教育は緊急を要すると訴えている。

参考

  • 海外委託調査員

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