2007年度予算案発表される

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年11月

アブドラ首相兼財務相は1日、2007年度予算案を発表した。9年ぶりとなる法人税の引き下げに加え、農業、バイオ産業、中小企業向け金融への支出を増やすなど、エコノミストの予想を上回る積極予算となった。前年度比31%増の開発支出を背景に、政府は経済成長に自信を見せており、07年の国内総生産(GDP)成長率を6%と予測している。

原油価格の高騰を受け、国営石油ペトロナスの配当を含めた石油関連の税収は537億リンギと歳入全体の39.9%を占め、引き続き政府の財政を支えている。

07年度予算案では、現行28%の法人税を07年から27%、08年から26%に引き下げることが盛り込まれた。

07年の経済成長率予測6%

おう盛な内需と堅調な輸出に後押しされ、国内経済は拡大の方向にあるという。特に卸売り・小売り、ホテル・レストラン、運輸・倉庫・通信、金融サービス部門では引き続き高い成長が続くと見込まれる。世界的な電子・電気製品の需要増は、マレーシアの輸出産業にとって追い風となり、国内製造業の成長につながると予想される。

05年のGDP成長率は5.2%にとどまったが、今年は第2四半期(4~6月期)に5.9%を記録。政府はこれまで06年のGDP成長率を5.5~6%としていたが、予算案では5.8%に修正しており、07年は6%と予測する。経済成長をけん引するため、政府は07年度予算案で、開発支出を前年度比31%増となる465億リンギに増額している。

06年インフレ率は3.7%

05年の消費者物価指数(CPI)上昇率は3%。原油高を背景とする石油製品の値上がりで、今年1~7月では3.9%を記録した。インフレ圧力はいまだ存在するものの、外国為替市場でのリンギ高により輸入品価格が抑えられていることなどから緩和されている。

政府は、ガソリンや軽油価格を年内は引き上げないと公約しており、6月に実施された電気料金の値上げの影響も比較的軽微にとどまったことから、06年のインフレ率は3.7%に収まる見込みという。

経済社会、雇用情勢

政府は、2006年も雇用市場が順調に推移するとみている。特に下半期は、活発な国内経済活動と明るい企業景況感を受け、雇用機会は増える見通し。06年の被雇用者数は前年比2.3%増の1110万人に達するとみられる。労働力人口の成長率は同2.3%に上る見込み。

最も雇用機会を創出するとみられるのはサービス部門。これに製造業部門、農業部門が続く。失業率は3.5%にとどまる見通しで、15年連続で完全雇用を維持するものとみられる。

06年の労働参加率は68.9%と高水準を維持する見込み(05年は同65.7%)。男性の労働参加率は86.7%、女性は46.1%とみられる(05年は同86.6%、45.7%)。女性の労働参加率は先進国に比べればいまだ低いが、高等教育を受けた女性の労働参加率は近年、上昇傾向にある。人的資源の質の向上を目指す政府の方針に高等教育を受けた労働力人口は06年の場合、全体の21.2%(05年は20%)に上る見通し。

堅調な雇用市場を背景に、人的資源省の職業あっせんウェブサイト(Electronic Labour Exchange=ELX)への登録者数は06年6月末時点で7万718人に減少(05年6月末時点で7万8546人)。求職者の半数以上(4万57人)の年齢層は20~24歳で、性別では女性(59.6%、42155)が男性を上回っている。求職者のうち52.9%がSTPM(高等教育終了資格)や学位を持っている。

ELXを通じて登録された05年の求人募集の数は、堅調な国内経済活動と明るい景況感、将来的な経済成長見通しを受け、30万4500人に上った。このうち学位保有者に対する求人数は2万4779件(全体の8.1%)。06年上半期の求人数は39万6745件と大きく増加(05年1~6月期は4万4084件)し、このうち1万2468件が学士への求人だった。最も求人が多かったのは製造業(42.5%)、次にサービス業(20.3%)だった。

人的資源省傘下の労使関係局(IRD)の報告書によれば、06年1~5月期に発生した労働争議の数はわずか1件で、172人の労働者が参加、労働損失日は516日だった(05年の労働争議は3件。参加労働者は1020人、労働損失日は4793日)。IRDは今後も労働市場の調和の取れた環境の維持のために努力を続ける。労使紛争は通常、当局の積極的介入や関係者の協議や交渉によって解決に至り、結果的に高い生産性を確保する。

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