「労使関係法制度先進化策」(ロードマップ)合意に対する政党の反応
去る9月11日に政労使間で合意した「労使関係法制度先進化策」(ロードマップ)(注1)について、国会の監査委員会において担当官庁である労働部が厳しく追及されている。
急進派の民主労働党(DLP)は、本ロードマップ合意に国内労組二大勢力の一方である韓国全国民主労働組合総連盟(KCTU)が参画していないため不公正だとする一方で、最大野党のハンナラ党(GNP)も争点を先送りしたとして政府を非難している模様である。
「労使関係法制度先進化策」(ロードマップ)は、2003年9月の提案以来、長期にわたり断続的に行われてきた交渉の末にようやく合意に達したものであり一定の成果があったとはいえ、合意の中で政府が2つの核心となる争点(組合専従者に対する賃金支払い禁止、企業内複数労働組合の許容)について猶予期間の延長に譲歩したことから、上記のような批判を浴びているものである。
民主労働党のダン・ビョンホ議員は「先月の合意は非公式なもので法的拘束力を持たない。協議はそれぞれの利害に応じて行われただけだ」と述べている。一方、ハンナラ党のアン・ホンジュン議員は政府の譲歩を次のように批判している。「政府は過去10年間、労働問題について何も達成できておらず、最近の合意も例外ではない。単に政府義務の不履行にしか見えない」と。同党の別の議員は「いくつかの企業に既に複数の労働組合が存在する中で、複数組合主義を先送りする意味は一体どこにあるのか。これでは一層の混乱を招くだけである。」と主張している。
他方、与党ウリ党のキム・ジョンリュル議員は、賃金支払い問題を先送りについて次のように批判を述べている。「組合員が300人以下の中小規模の組合の40%以上が使用者から賃金支払いを受けている組合専従者は存在しない一方、大規模組合の99%は存在している。つまり、組合専従者に対する賃金支払い問題の先送りは大規模労組を保護することにつながる。」というものである。
また、合意に参加していない全国民主労働組合総連盟(KCTU)は、穏健姿勢をとるライバル、韓国労働組合総連盟(FKTU)が同合意に署名したことを批判し続けている。
政府が進める柔軟な労働市場と労働者の権利保護の達成を目指した、本合意に基づく一連の労働法案も、こうした集中する批判の中では行き詰まりを見せるものと考えられる。労働問題の専門家も「政府主導の方策では、問題の多い韓国の労働環境に実際の変化をもたらすのは難しい。」と指摘している。
注
- 国際基準に見合った労使関係の構築を目指し、盧武鉉政権は2003年9月「労使関係法制度先進化策」(ロードマップ)を発表した。これは労使自治の原則に基く労使双方の責任権限の明確化や労働市場の柔軟かつ安定化を図ることにより、労使紛争の最少化、労働基本権の向上及び企業の競争力強化を同時に実現していくものであったが、その後労使間で対立が大きくとりまとめに時間を要し、ようやく2006年9月11日に労使政委で合意をみた。特に対立が大きい「企業内複数組合の導入」と「労組専従者への賃金支払禁止」については3年間の措置猶予期間(2009年末まで)が設けられることとなっている。
参考
- Herald Media INC
2006年11月 韓国の記事一覧
- 2020年に480万人の労働力不足に陥るおそれ
- 「労使関係法制度先進化策」(ロードマップ)合意に対する政党の反応
関連情報
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