労働集約型産業への投資インセンティブ

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年11月

インドネシア政府は、国内の雇用情勢の改善のため、労働集約型産業への投資インセンティブについて検討していたが、現在同インセンティブの実施にかかる具体的な政令の準備が進捗している。

インセンティブの主な内容は、以下のとおりである。

  • 最初の6年間は投資額1億ドル毎に30%の減税。
  • 投資家の資産に対する操業当初数年間の減税措置。
  • 投資家の当初損失の繰り延べ期間を、現行規則の5年から10年に延長。

この措置の適用対象は労働集約産業に対する投資に限られており、適用となる投資家は投資調整庁(BKPM)が決定し、申請を受理したうえで税務署に申請受理投資家の詳細について通知する。このプロセスについては、経済調整相の部門間委員会が監視をおこない、制度の透明性と公平性を確保する。

このインセンティブにより投資を実施する最初の国は、カタールとみられている。ガス資源が豊富な同国はインドネシアでのインフラ投資を予定しており、すでにインドネシア国営企業(1社)とカタール投資委員会は、道路プロジェクト、発電所プロジェクトへの共同投資を行うための合弁企業設立の覚書に調印すみである。

BKPMのMuhamad Lutfi長官によれば、社名は明らかにしないものの、米国、フランスの自動車メーカー2社も製造工場建設に合計22億ドルの投資をおこなうものと見込まれている。米社の場合、最大14億ドルの投資をおこない、年間約20万台の製造を計画している。他方、仏社は年間9万台を製造する生産設備に8億ドルを投資する計画である。

オーストラリアの化学薬品産業の最大手企業Oricaも、インドネシアの硝酸アンモニウム製造設備に2億ドル以上の投資を計画している。東カリマンタンのBontangの工場設置により、インドネシアの国内市場向けに年間25万~35万トンの硝酸アンモニウムを生産する予定である。

こうした新たな国内への大規模な投資に備えて、インドネシア政府は公共インフラプロジェクトの支援策の準備をおこなっている。主に支援準備がおこなわれているは道路開発関係である。政府はリスク負担制度を採用し、民間投資家の資金による公共インフラプロジェクトに一定のリスクを負担する。さらに政府は、投資家がインドネシアへの投資をより安心しておこなえるよう関係規制の整備を図ることとしている。

インドネシアに対する「魅力的な」投資環境を維持するためにはマクロ経済の安定が必要不可欠であるため、インドネシア銀行はインフレ率の低下に合わせて年末までの金利を10%程度にまで引き下げることとしている。こうした低金利政策により、一層多くの投資が集まるものと期待されている。

インドネシアにおける投資パフォーマンスは、依然として低調であるものの、徐々に改善に向かっている。BKPMが最近発表したレポートによれば、政府が8月までの8カ月間に承認した海外直接投資計画は、前年同期の72億8000万ドルから86億5000万ドルに増加する一方で、国内投資承認額は昨年の33兆3100億ルピアから、96兆7300億ルピアに急増している。国内投資承認額の急増は、新規プロジェクトの承認が、昨年は22兆7900億ルピアであったのに対して、今年は81兆4600億ルピアとなったためとみられる。

参考

  • 現地委託調査員報告

参考レート

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