長年の懸案であった最低賃金制度を3職種で導入へ
マレーシア人的資源省では、2002年に最低賃金に関する調査委員会を設け、検討を重ねたが、このほど、民間警備員、民間診療所の助手、カジュアル・ワーカー(注1)の3職種、計約25万人について最低賃金制度を導入する見通しとなった。マレーシアでは過去、最低賃金制度の導入が試みられたことはあったが、主に制度上の欠陥が原因で実現に至らなかった(注2)。現地紙の報道によれば、3業種の最低賃金制度は年内にも導入される見通しとのことである。
現状で警備員の月額賃金は、残業手当を含めても500リンギ程度、診療所助手とカジュアル・ワーカーの月額賃金は200~500リンギ程度である。8月8日の記者会見でフォン人的資源相は、3職種の労働者の立場が弱く、十分な賃金を得ていないことから、政府が最低賃金を保証する必要性を感じたと述べた。また他の職種への適用については、労働者から要望があがれば対応するとしている。同相によれば、政府は下記の7つの最低賃金審議会を設置する予定であり、審議会は、労働条件に加えて、休日出勤手当や退職金制度について検討し、2006年10月までに同省に勧告を行う予定だという。各審議会には3人の中立の委員に加え、労使(注3)が2名ずつ委員として協議に加わる。
設置予定の最低賃金審議会
- マレー半島各州の民間警備員
- サラワク州の民間警備員
- サバ州の民間警備員
- マレー半島各州の民間診療所助手
- サバ州の民間診療所助手
- サバ州のカジュアル・ワーカー
- サラワク州のカジュアル・ワーカー
MTUC、5年ごとの賃金改定を要求
最低賃金制度導入の動きを受けてマレーシア労働組合会議(MTUC)のラジャセカラン書記長は、生計費の変動を考慮し、最低賃金は5年ごとに見直すのが望ましいと語った。また、適正な賃金の設定により、3職種で外国人労働者への依存度が軽減するだろうとも述べている。
また、同書記長は、警備員について、その責任の重さに比して賃金が低いと指摘、診療所の助手は、労働時間が13~14時間に及ぶなど長時間労働であることを考慮すべきだと述べた。臨時雇いの農場労働者については、低賃金であることは言うに及ばず、実際に働けるのも一月のうちのわずかな日数に過ぎないのが現状だと指摘し、最低賃金制度の導入の必要性を強調した。
注
- カジュアル・ワーカーとは、企業化された大規模農場で働く労働者の職種のひとつで、随時雑役に携わる者を言う。
- 1981年、政府は港湾労働者の最低賃金を700リンギと定めたが、その後賃金水準が上昇し、この最低賃金額は使用されなくなった。その翌年には、店員補助、映画館従業員、バー・パブの従業員の最低賃金導入が試みられたが、最賃額が業界の賃金水準を大きく下回っていたため、実現に至らなかった。
- 対象となる3職種には労働組合がないため、労働者の代表としてマレーシア労働組合会議(MTUC)が参加する。
参考
- 8月9日付ニュー・ストレイツ・タイムス
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