深刻化する高学歴層の失業

カテゴリー:若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2006年10月

中国では、今、大学新卒者が深刻な就職難に直面している。

2006年7月に実際された中央学校部と北京大学公共政策研究所による「2006年中国大学生就職状況調査」によると、今年の大学卒業者のうち就職のきまったもの、就職が内定したものは全体の49.8%に過ぎないということである。就職状況の良い北京でさえ、40%の大学生がまだ就職できないでいる。

人事部は、全国の卒業生の数は、2005年が338万人、2006年が413万人と22%にあたる75万人増加しているにもかかわらず、求人は166.5万人に満たないと悲観的な調査結果を発表している。中国の新規学卒者は、深刻な就職難に直面しているといえる。

留学生はどうであろうか。1978年から2003年まで70.2万人が海外に留学し、17万人以上が帰国している。教育部所管の高等学校の校長の78%は留学経験者であり、博士号をもつものが63%を占める。また、政府系の研究所、重要な実験施設の所長は72%が留学経験者と教育、研究の領域での活発がめざましい。しかし、この状況も近年の新たな人材ニーズにより、変わりつつある。すなわち、弁護士、会計士とコンサルタントといった職業へのニーズが増えるようになり、留学経験はそれほど重要ではなくなってしまったといえる。かつては経済、政治、文化の発展にリーダーシップを発揮してきた留学経験者だが、近年では帰国しても求職に6カ月以上を費やしたあげく、就職者は57.5%と、就職が難しい状況に直面している。

こういった事態について、将来の中国の発展の障害になる可能性を懸念する声は高い。都市で大学に通学した多くの学生は卒業しても、農村部にかえりたがらず、都市部での就職を望んでいる。都市部における大学卒業者が占める割合が20%であるのに対して農村部はわずか1%に満たない。このような高学歴者の大都市での滞留も就職難の一要因ではあるようだ。

国有企業、民営企業、外資系企業106社を対象とした企業調査では、55.8%の企業が無給で大学生を就業させていた。また、調査では、69.2%の大学生が無給で働いていることが明らかになっており、1万2600人を対象としたインターネット調査の結果でも、0.8%の大学生が「無給就業グループ」として確認されている。最近の現象として、1000元未満の低賃金就労から無給での就労への移行が確認されている。大学生が、無給でも職を得たいと希望する理由には、求職の際には、即戦力としての職務経験が問われるが、そういった実践技能を身につけたいと考えているからと指摘できる。無給就労期間中は親の扶養を受けることになる。そのような「親のすねかじり族」の増加も今の中国の社会問題のひとつである。

大学を卒業するまでの20年以上の間に、各家庭では我が子のために巨額の教育投資を行っている。また、国も教育機関への多額な投資を行っている。そういった教育投資のすべては大学生が失業した場合には回収が不可能となってしまう。毎年100万人の大学生が失業した場合には500億元を損失するという試算も発表されている。

大学卒業者の失業により、国レベルおよび個人レベルでの教育投資を浪費することになるばかりでなく、将来的に高度な知識労働者層の所得水準の低下を引き起こす可能性も指摘される。

1996年に93.7%をしめた高等教育を受けた者の就業率は、2005年には72.6%にまで落ち込んでいる。

経済の急成長により、高度人材のニーズが日々高まっている中国。労働市場の沿海部と内陸部、都市部と農村部の労働市場の流動性の欠如が高度人材ニーズへの分析に影響を及ぼしていると指摘する専門家もいる。5年から10年の中期スパンによる予測分析を綿密に行うことで、人的資源の最適な育成と配置が要求される。

参考

  • 海外委託調査員(経営側)レポート10月
  • 上海証券報2006年9月18日付他

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