オーストラリア公正賃金委員会に対する初めての最低賃金引き上げ要求

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  • 国別労働トピック:2006年10月

2006年7月、オーストラリア労働組合評議会(ACTU)はオーストラリア公正賃金委員会(AFPC:2006年3月に施行された新労使関係法「ワークチョイス」により新設された最低賃金決定機関)に対し、初めての最低賃金の引き上げ要求を行った。AFPCの裁定が下るのは11月になる予定。

現在の連邦最低賃金額は、2005年の6月に行われた引き上げ(週当たり引き上げ額17.00豪ドル、3.6%増)によって484.40豪ドル/週となっていた。今回の交渉で、労働組合の中央組織であるオーストラリア労働組合評議会(ACTU)は(週当たり引き上げ額30.00豪ドル、4.0%増)の引き上げを要求しているが、これに対し、オーストラリア商工会議所(ACCI)は、賃上げがインフレを引き起こすおそれがあるとけん制した。

ACCIと連邦政府はAFPCに対して具体的な賃金引上げ額を提出していないが、連邦政府が発表したレポートでは、時間あたり最低賃金が10セント引き上げられると3万2800件の雇用が失われ、経済産出高は0.2%減少するという。このことからACTUの要求した引き上げ額が実施されるのは困難とみられている。

新労使関係法「ワークチョイス」の概要

ワークチョイスの施行をめぐっては、労組による大規模な抗議デモが国内各都市で展開されたほか、野党労働党は2007年に予定されている総選挙の公約に「ワークチョイスの見直し」を加えると発表している。一方、連邦政府は失業率の低下などの例を挙げ、労働市場の好調はワークチョイスの改正が功を奏したとしている。

ワークチョイスに基づく主な制度変更点は以下のとおり

  1. 連邦と州に分配されていた労使関係の権限を連邦レベルで統一
  2. オーストラリア最低労働基準(Australia Fair Pay and Conditions Standard)の設定
  3. オーストラリア職場合意(AWAs)手続の簡素化
  4. 豪州労使関係委員会(AIRC)の権限縮小
  5. 従業員100人未満の中小企業における不当解雇禁止法の適用免除
  6. 労働争議の制限

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