労働省が、社会保障制度の大幅改革提案を発表:
「雇用の延長」が柱。「家庭と仕事の両立支援」は国家公務員を対象に一足先に導入

カテゴリー:高齢者雇用労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2006年1月

スペイン労働省は、2005年11月10日、社会保障制度の抜本的改革に関する提案を発表した。主な柱は「雇用の延長」。早期退職が認められる年齢を、現在の60歳から61歳へ引き上げることにより、人々に、法定定年退職年齢(65歳)を越えても働くインセンティブを与えるのが狙い。労働省は労組・雇用者団体に対し資料を提出するなどして、社会対話の場での議論の準備を進めている。政府の提案の主な内容は、以下の通り。

  • 社会保険料支払に基づく年金:

    法定定年退職年齢は現行の65歳のままとする。年金受給のために必要とされる最低負担期間は15年。社会保障監視機関を設け、保険料の収入と給付のバランスを常時フォローし、制度維持の保証に努める。

  • 早期退職:

    早期退職の慣行により、現在は63.7歳となっている実質退職年齢の引き上げを目指し、早期退職に必要な条件を厳しくする。任意の早期退職年齢を現在の60歳から61歳に引き上げると同時に、少なくとも30年間保険料を支払った労働者に限る。

  • 雇用の延長:

    人々に65歳を過ぎても働き続けるというインセンティブを与える。

    現在は65歳を越える労働者、およびこれを雇用する企業のそれぞれが保険料支払免除、年金額増額等の優遇措置が適用されている。同措置を更に拡大する。

  • 出産・育児休暇:

    母親の産休(4カ月)終了後、父親に1週間の育児休暇を認める。

今回の社会保障制度の改革案で、もうひとつ注目されるのは、「父親の育児休暇」の導入。この父親の育児休暇を含む「家庭と仕事の両立支援」措置については、一足早く、国家公務員の間で実現する見通しとなり、大きな反響を呼んでいる。

公行政省と労組は、2005年12月7日、「国家公務員の出産・育児休暇拡大プラン」にサイン。同プランは、父親に10日間の育児休暇を認める他、母親も1日1時間の授乳時間のかわりに、産休の4週間延長を選択できるようにした。その他にも、(1)性別に関わらずフレックスタイムを導入し、週労働時間総数を維持しながらその3分の1を家庭の事情に合わせて自由に動かせるようにする、(2)退勤時間は18時より遅くならないようにする、(3)12歳以下の子供や介護が必要な家族がいる場合、労働時間の短縮、もしくは3年間の休職を認める(注1) ――等、家庭と仕事の両立支援の充実を図った内容となっている。

日本と同様に、出生率の低下が続いているスペイン(注2)。子供や老親などの世話・介護の必要な家族をもつ労働者にとって、「家庭と仕事の両立」は、大きな課題となっている。国家公務員だけでなく、民間企業にも両立支援措置の導入を求める声があがっており、こうした声を受け、企業がどのように対応していくのかが注目される。

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