中米自由貿易協定(CAFTA)発効へ、米国雇用への影響

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2005年9月

米国は8月2日、AFL-CIOや繊維・砂糖業界などの強い反対で、議会承認に1年以上を要した中米貿易協定(CAFTA)法案をようやく成立させた。CAFTA発効は、労働組合が危惧するように米国内の雇用の喪失と産業の空洞化をもたらすのか、それとも政府が主張するように中米、米国の雇用創出に寄与するのか、議論の対立を残したままの実行となった。

アメリカの通商政策の中のCAFTA

CAFTAはアメリカにとって、1994年にカナダ、メキシコと結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)に続き、中米に自由貿易協定(FTA)を広げるものである。アメリカ政府は南北米州全域を自由貿易圏とする米州自由貿易地域(FTAA)の実現を目指しており、CAFTA実現を弾みにして、今後他国との通商交渉を優位に進めたい意向と言われる。CAFTAの参加国は、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアおよびドミニカ共和国の6カ国である。

雇用創出効果は期待できるか―NAFTAとCAFTA

今回同様、NAFTA発効時にも雇用創出効果が謳われたが、期待された効果を挙げていないとの調査結果が経済政策研究所より発表された。同調査によると、2000年7月以降、メキシコの輸出加工区では500の工場が閉鎖され、約10万人の雇用が失われた。同時期にアメリカの繊維産業では21万強、衣料産業では30万強の雇用が失われている。CAFTAにより中米地域に28万強の雇用創出が見込まれるとする予測もあるが、これは中国からの低価格で競争力の高い衣料品の輸入の効果を考慮しておらず、絵に描いた餅に過ぎないと同研究所は指摘している。

CAFTAと米国内雇用

アメリカ政府は、CAFTAにより実現する相手国のサービス市場開放が米国企業に莫大な利益をもたらすと期待を寄せている。ブッシュ大統領は法案署名式の席上、CAFTAは米国内の雇用増加につながると述べた。一方AFL-CIOはNAFTA同様、CAFTA発効により雇用の海外流出が加速するとして強く反対するとともに、中米地域の極度の低賃金労働者問題の改善を求めた。

しかし議会承認に先立つ5月、CAFTA諸国首脳とブッシュ大統領が会談した際には、主要紙はCAFTAに反対する砂糖産業界や労働組合を保護主義的として批判。ゼーリック国務副長官もCAFTAを締結しなければ、米国の繊維産業の中国へのシフトと中米の雇用喪失を阻止できないと指摘するとともに、AFL-CIOは中米の労働基準を問題視するが、雇用確保こそが先決との主旨の発言をした。いずれにしてもCAFTAに強く反対していたAFL-CIOにとって法案の成立は大きな衝撃となった。

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