大学と労働市場―就職傾向
アルマラウレア大学協会は、数年前からイタリアの大学卒業者に関するデータを提供している。このデータは、大学、学部、学科、性別、在学中の労働活動、成績、出身、第2専門課目、言語および情報処理の知識、在学中の素行ならびに付加的な資格(マスター、外国での学業、インターンなど)に関して調査を行った結果である。しかし、このデータの最も重要な点は、卒業1、3、5年後の大学卒業者の就職状況に関する調査であろう。本稿が主点を置いているのもこの点である。
2004年報告書(2005年2月発表)では、5万6000人(正確には5万5924人。回答率82%)の卒業者を対象に調査が行われた。うち、卒業後1年の者が2万3459人、3年の者が1万8074人、5年の者が1万4391人である。一般的に、大学卒業者が労働市場に参入するのは徐々に遅くなる傾向がある。2003年には、大学卒業者の54.2%(前年比0.7%減)が就業者であった。しかし、卒業から1年後の者のうち27%強が、以前からすでに行っていた活動を続けていることも注意しなければならない。
1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | |
---|---|---|---|---|---|
1年後の就業者(%) | 56.8 | 57.5 | 56.9 | 54.9 | 54.2 |
3年後の就業者(%) | 77.0 | 75.0 | 72.9 | ||
5年後の就業者(%) | 86.4 |
性別ごとの就業状況を見ると、59%の男性が就業しているのに対し、女性の就業者は50.8%である。女性のデータに関しては、1999年と比べて約5ポイント低下している。男性の場合、2003年のデータは1999年を0.7ポイント上回っていたが、2001年(61.9%)に比べると数値が低下している。とくに数値の低さが目立っているのは、2000年、2001年および最新データである。データが完全に揃っているのは1999年の卒業者分のみであるが、これによると、男性の場合、卒業5年後に実質的な完全就業が達成されているのに対し(90.4%)、同時期の女性のデータはいまだ低い(83.3%)。3年後に関しては、男性81.2%に対し、女性73.7%である。求職活動をしない者の割合にも触れておくべきであろう。2003年の卒業者についてみると、卒業1年後の無職率は19.1%であり、従前に比べて増加傾向にあることがわかる(1999年から2000年の間に0.2%増、2000年から2001年にかけて1.2%増、2001年から2002年の間に0.5%増、2002年から2003年では0.5%増)。3年後の卒業者の無職率は9.2%、2000年は7.9%、1999年は6.2%であり、悪化が顕著である。
地域ごとの就業状況(卒業から1年後の状況に関するもの)もまた重要である。傾向としては、a)2002年および2003年の状況が全体的に悪かったこと、b)なかでもとくに、南部の状況が悪かったことが挙げられる。
1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | |
北部 | 65.8 | 66.4 | 66.7 | 64.2 | 64.6 |
南部 | 42.3 | 43.5 | 42.6 | 42.5 | 41.0 |
卒業後1年の者の状況を考慮すると、まず、特定の学部(医学、法学系)では、卒業後の訓練中であるためにまだ求職活動を行っていない卒業者の割合が高かった。一方、工学および建築学部の卒業生は、職を見つけるか、働き続けている者が多い(それぞれ76.1%と73.6%)。卒業から3年後では、卒業者の状況は格段に改善されており(全体で72.9%)、とくに工学および建築学部ではほぼ完全就業が達成されている。これに対して、医学および法学の卒業生は、いまだ教育訓練期間にあることもあり低率にとどまっている。
学部 | 就職率 |
---|---|
工学 | 91.3 |
建築学 | 89.6 |
教育学 | 86.2 |
政治・社会学 | 85.1 |
心理学 | 84.6 |
言語学 | 77.7 |
農学 | 77.2 |
化学・薬学 | 77.0 |
経済・統計学 | 74.3 |
文学 | 70.2 |
地理・生物学 | 65.2 |
科学 | 60.8 |
法学 | 55.4 |
医学 | 29.5 |
計 | 72.9 |
労働市場への参入方法に関しては、公的システムの成果が上がっていないことが明らかになっている。2003年には、100人中38人が、自分で職を見つけている。このデータには、求人広告に応募した者(6%)も加えうるだろう。また、16人は、家族および知人の仲介を利用している。派遣労働業者を利用したのは4人である。公的な採用試験の利用は、年が経つごとに増えている(卒業後5年目では100人中10人が利用)。
卒業後1年では、100人中41人が安定的な労働関係に入っている。性別でみると、男性の方が安定的な職に就く傾向がある(48.4%)。女性もまた、35.5%は期間の定めのない労働関係に入っている。報告書によれば、この男女差は、「女性における独立労働(自営業)の割合の差に」由来するものとのことである(独立労働の割合は、男性100人中17人に対し、女性は8人)。非典型労働に関しては、女性就業者の中でこの形態を選ぶ者が多く、就業者の半分を超えている(男性は100人中37.5人)。
これが、3年を超えると状況は全く違ってくる。1999年の卒業生のうち、安定職に就いた者は74%である(1年後と比べて33%の増加)。こうした安定職のうち、期間の定めのない契約は20ポイントに増加している(5年後になると49%と約半数になる)。独立労働も12%から25%へと増加している。5年後では、非典型労働の割合が減少すると同時に(38.2%から23.5%へ)、組入れ契約(15%から1%へ)および契約を締結しない労働活動(5%から1%へ)に至っては実質的に消えている。また、安定雇用における男女格差が15ポイントまで拡大している。安定性に関しては、特定の学部(工学部、建築学部、法学部および経済・統計学部)で就業者の80%に達する(ないしこれを超える)勢いである。文学部や教育学部では、この数値が低い。1999年に関して卒業1年後に働いていた者で、その5年後に労働を安定的に継続していたのは85%である。一方、非典型契約を締結していた者で5年後に非典型労働を継続していたのは28.3%であったのに対し、安定的な雇用へ移行したのは60.5%であった。組入れ契約および見習契約の5年後の状況は、92%が安定的関係へ移行している。卒業1年後に職に就いていなかった者で、安定的な地位に就くことができた者は半数強である(50.3%)。しかし、100人中24人は非典型的地位にとどまっている。また、100人中22人は、5年後も職に就くことができていない。卒業5年後も、地域ごとの格差がみられる。安定的な職に就いている者は、北部では76%であるが、南部では70%である。非典型労働は、北部では21%、南部では25%であった。
卒業1年後における職業上の地位をみると、2002年の卒業者と2003年の卒業者とのデータが類似していることがわかる。たとえば、経営職・役職は2002年が2.7%であったのに対し2003年は2.5%、中上級の事務職はそれぞれ36.8%と35.3%、協働労働者は24.3%と23.1%、教師は6.3%と7.6%である。一方、卒業3年後および5年後のデータには違いがみられるようになる。3年から5年の間に、経営職・役職は4.3%から9%に上昇したが、中上級の事務職は43.8%から35.6%へ減少している。事務職の地位から昇進して役職に就いたとみれば、この2つのデータには関連があるということもできるだろう。自由職に関するデータも興味深い。1999年の卒業者をみると、3年後に自由専門職に就いた者は8.3%であり、5年後では18.1%であった。逆に協働労働者は、13.9%から10.2%へと減少している。5年後の職業上の地位を性別ごとにみると、男性の役職者は女性の2倍(12.1%に対し6.4%)、自由専門職では男性21.4%に対し女性15.2%であった。協働労働者の場合は逆であり、男性7.7%に対し女性12.5%と、女性の方が多い。
卒業者は、自らの専攻に関する職に就くことができているだろうか。この点最も恵まれているのは医学部である。卒業1年後では就業者のうち91.3%が、5年後では94.1%が医療機関に就職している。これに、教育、建築が続く(1年後と5年後では50%前後)。農学、科学、文学の卒業者は1年後では3分の1程度であり、5年後になるとさらに低くなる。就職に関しては首位に立つ工学であるが、1年後に関係部門(土木、建設および機械取り付け)に就職した者は22.4%にすぎず、5年後の数値もほとんど変わらない。
最後に、手取り平均月収についてみてみよう。卒業後1年では1000ユーロに達しない。3年後では1142ユーロであるが、それ以前と比べると若干ではあれ減少傾向にある(2002年は1167ユーロ、2003年は1161ユーロ)。1999年の卒業者をみると、3年後は1167ユーロであったのが、5年後は1281ユーロになっている。卒業5年後で最も高い収入を得ているのは、医学部および工学部出身者であり、最も低いのは文学部または教育学部出身者である。卒業1年後では、男性は女性よりも25%ほど収入が多く、3年後になるとこの格差は拡大する。地域格差もあり、北部の卒業者は平均1330ユーロの所得を得ているのに対して、中部は1271ユーロ、南部は1132ユーロである。
一般に言われていることとは逆に、アルマラウレアの調査では、民間部門の賃金の方が高かった(卒業5年後で7%ほど)。金銭的にみて最も豊かなのは、上から化学(1505ユーロ)、冶金(1493ユーロ)、電子工学(1479ユーロ)、金融(1434ユーロ)、各種製造業(1426ユーロ)、情報処理(1406ユーロ)である(ボーナス等を含む)。
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