EUリストラクチャリング・フォーラムの開催

カテゴリー:雇用・失業問題人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2005年8月

欧州の労使団体、欧州連合(EU)機関、加盟国政府、地域・地方機関の代表が参加するEUリストラクチャリング・フォーラムの第1回会合が6月23日に開催され、リストラの否定的な影響をいかに最小限に抑えるかに焦点を当てた討議が行われた。EUは、地域政策予算を活用してリストラに直面する労働者を援助する活動を実施している。4月に破綻したイギリスのローバー社の危機に対する支援は、迅速な対応の好事例とされている。

(1)リストラクチャリング・フォーラム

欧州委員会は、3月末に発表した「リストラクチャリングと雇用」に関する報告書のなかで、このフォーラムの設置を提案していた。フォーラムは、リストラの当事者や利害関係者の代表が参加するハイ・レベルの会合であり、労働者、地域社会や環境に対する好ましくない影響をできる限り少なくするために、リストラを管理していく方法について定期的に討議を行うことを目的としている。

バローゾ欧州委員会委員長は、「欧州に現状維持は許されず、グローバル化、技術や人口動態の利点を活用していかなければならない」「欧州には現代に適合した産業政策が必要である」と述べた。

欧州産業経営者連盟(UNICE)のバック事務局長は、「事業再編を防止または最小限にするために、企業に法的な拘束衣を身につけさせることは生産的ではない。リストラに対処する最善の方法は、雇用と成長のためのEUの戦略を推進していくことである」と主張した。また、UNICEの社会問題担当局長は、リストラの結果を管理するEUレベルの枠組みの持続可能性に疑義を呈し、地方レベルのほうがリストラの社会的結果を管理していくのにより適しているとの見解を示した。

欧州ユニオン・ネットワーク・インターナショナルは、「企業レベルでリストラを管理することは、効率的ではなく、欧州レベルでの何らかの枠組みが必要である」と主張した。

リストラクチャリング・フォーラムは、年2回開催される。次回の会合は、リストラの予測、産業政策、対外的側面、革新と雇用創出の結合における地域レベルの役割に焦点を当てる予定としている。

(2)リストラ過程の支援に関するEU構造基金の活用事例

EUは、加盟国間・地域間の経済面・社会面における格差の是正を重点目標に位置づけ、構造政策(地域政策)に基づく財政的援助を実施している(EU総予算の約3分の1)。構造政策の主な手段は、構造基金(欧州社会基金、欧州地域開発基金など)、結束基金である。構造基金、とりわけ欧州社会基金は、リストラに直面している加盟国を支援する活動に対して援助を行う。これらはすべての産業で働く人々、リストラが進行中の産業(農業を含む)、若年者や女性のようなリストラによる失業に苦しむ個人やグループを対象としている。

2005年4月、イギリスのウェスト・ミッドランドを拠点とするローバー社が破綻した。6250人の労働者が解雇され、さらに主にサプライ・チェーンの労働者1万5000人が職を失う危機に陥った。欧州委員会は、ローバーの危機に対処するために構造基金を活用するよう、直ちにイギリス当局へ伝達した。ジョブセンター・プラス(公共職業安定所)が解雇された人々を支援する活動を開始し、生涯学習協会(The Learning Skills Councils)が欧州社会基金の援助によってこれを引き継いだ。これは危機的状況における迅速な対応の好事例となった。ローバー危機に対する支援額は、構造基金7450万ユーロ(欧州社会基金4600万ユーロ、欧州地域開発基金2850万ユーロ)となる見込みである。これらの資金は、技能訓練期間中の労働者の賃金補助制度、解雇された高齢労働者に対する融資制度、緊急職業紹介パッケージ(面接、ガイダンス、訓練計画立案)などの実施に活用された。

ポーランドにおいては、リストラ過程にある労働者を再訓練するための政策に欧州社会基金から7500万ユーロ(2004~2006年)が援助される。この政策は、リストラに直面した人々に対して新たな職業能力を身につける機会を提供し、社会経済状況の変化に適応した再就職を実現させることを目的としている。支援策は、職業訓練、技能開発コース、再就職に対する雇用補助金、職業紹介、職業情報の提供、キャリア・アドバイス、個別計画の策定などである。

フィンランドでは、地方の中小企業に職業訓練や構造変化に対応するためのサービスを提供する組織に対し、欧州社会基金が援助を行った(2002~2005年)。約100社の中小企業の800人以上の労働者がこの恩恵を受けた。より包括的な職業生活の促進を目的としたこのプログラムは、高齢者をリストラの影響からいかに保護するかを分析するプロジェクトも実施している。

欧州社会基金はまた、欧州全域とりわけ新規加盟国において、パートナーシップのための支援センターの設立に対し援助を行っている。このセンターは、ソーシャル・パートナーが変化を予測し管理するための中心的な役割を果たせるよう、ソーシャル・ダイアログを促進することを目的としている。

参考

  • 欧州委員会ウェブサイト、欧州労使関係観測所オンライン(EIRO)

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