拡大する企業の海外進出

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年8月

2001年から2004年の3年間で生産工程の一部または生産拠点を海外に移転したデンマーク企業は全体の11.4%にのぼることが、財務省統計局の調査で明らかになった。

デンマーク企業の海外進出は、産業界全般についていえる傾向だが、特に製造業の海外生産比率は急速に上昇しており、過去3年間に生産拠点を海外に移転した企業は4社に1社に及んでいる。なかでも繊維業は36.7%、鉄鋼・金属業は29.9%と極めて高い比率を示しており、サービス業や研究開発事業についても海外移転の傾向は年々高まってきており、現時点における比率は8%となっている。

東欧、アジアへ移転

時代の変遷とともに企業のクローバル化が一段と進展しているが、殊に輸出依存度が極めて高い大多数のデンマーク企業にとって、競争力の強化を図るために労働賃金の安価な旧東欧諸国、バルト三国、アジア諸国に事業・生産拠点を移転することは企業存続の鍵を握る緊急な課題となっている。

現在の状況を見ると、デンマーク企業の海外進出は、製造業、繊維や食肉加工関連の事業所が生産拠点を中心に海外へ移転するケースが大半(80%)であることが分かる。(表1)将来的には産業分野に係わらず、数多くの企業が営業、マーケティング、研究開発、IT関連等の事業活動を海外へ移転する傾向がますます高まると予想される。(表2および表3



労働組合と使用者組合の見解

企業が生産拠点を東ヨーロッパ諸国やアジア諸国に移転したことで失業を余儀なくされた組合員を多く抱える非熟練労働者の労働組合「3F」は、「企業の海外進出は、デンマーク製品の質の低下、ひいては企業の競争力を弱めることを意味し、経営者側の意図とは全く反対の結果をもたらすものだ」と、厳しく批判している。

一方、製造業分野の使用者協会であるD1(デンマーク工業協会)は、「企業が生産・事業活動を海外に移す事と失業者数の増加を単純に関連付けることはできない。協会が独自に行った調査では、毎年約25万件消失するとされている雇用のうち、企業の海外移転に起因するものは約5000件と推測される。しかし、毎年ほぼ同数(25万件)の新規雇用が創出されていることも明らかになっており、企業の海外移転が雇用状況全体に及ぼす負の影響はほとんどない」と結論している。

今後の課題

政府関係者や経済評論家は、企業のグローバル化に立ち向かうためには生産拠点や他の事業活動の海外移転は抑止できないが、一方では一貫した教育や研修を通じて非熟練労働者のスキルアップを図ることや、更なるコスト削減を目指した企業努力が極めて重要な課題だとしている。

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