欧州委員会、リストラと欧州労使協議会(EWC)に関する報告書を発表

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2005年7月

2005年4月5日、欧州委員会は、リストラと雇用に関する報告書を発表した。報告書は、リストラの影響を予測し、管理する能力を改善していくことを目的とした施策の概要を提示している。また、報告書は、リストラと欧州労使協議会(EWC)に関する欧州労使団体との第2段階の協議を進展させることを目指している。

1.リストラクチャリング

欧州委員会は、企業のリストラクチャリングとその否定的な社会的帰結、とりわけ雇用に与える影響への対応を、長年の優先課題としてきた。2002年1月には、「変化を予測し、管理する:企業リストラの社会的側面へのダイナミックなアプローチ」と題する文書を発表し、より積極的にリストラ過程を管理していくための政策策定に向けた労使団体との協議を開始した。

これに対し、欧州労連(ETUC)と欧州産業経営者連盟(UNICE)は、2003年10月、「変化とその社会的帰結のマネージにおける参考のためのオリエンテーション」と題する共同文書を発表したが、欧州委員会が求めるようなリストラにおける「原則」を定めるには至らなかった。

2005年4月5日、欧州委員会は、リストラの影響を予測し、管理する能力を改善・強化していくための施策の概要を示した「リストラクチャリングと雇用」に関する報告書を発表し、EU労使団体との第2段階の協議を開始した。

報告書は、EUの競争力は、企業が変化に迅速に対応するとともに、リストラの社会的コストを最低に抑えることに依存するとし、EUの政策はエンプロイヤビリティーの向上や代替的な雇用の開発を促進しなければならないと主張する。そのため、欧州委員会は、重要分野におけるその他のEU政策との調整、新たな財政支援、法規制の枠組みの導入、労使の関与の拡大などに関する施策を提示している。

財政支援の改革に関しては、予期せぬ地域や産業への深刻な影響に対応するため、年間10億ユーロのリストラ関連予算を措置するとしている。労使の役割の強化については、リストラの問題に関する産業別労使の対話を拡大させるよう提案している。欧州委員会が準備中の企業の社会的責任に関する報告書においても、社会的に責任のある方法でリストラに対処する企業の行動に焦点が当てられる予定である。欧州委員会は、2005年中にEU機関、労使団体、専門家などが参加するリストラクチャリング・フォーラムを開催することとしている。

2.欧州労使協議会とリストラに関する第2段階の協議

2004年4月、欧州委員会は、欧州労使協議会指令の改正を含む、欧州労使協議会の効果を増大させるための方策に関するEU労使団体との第1段階の協議を開始した。協議文書は、欧州労使協議会がリストラへの適応過程を円滑なものとするために積極的に貢献できるとし、EU労使団体にこの問題に関する検討を促していた。

2005年4月7日、欧州労連、欧州産業経営者連盟、欧州公共企業センター(CEEP)などのEU労使団体は、欧州労使協議会の運営に関する共同文書を発表した。共同文書は、2004年の秋に2回開催された欧州労使協議会の運営に関する成功事例を扱ったセミナーの成果を取りまとめたものである。同文書は、欧州労使協議会が、急速に伸長する多国籍企業において労使の変化への適用を支援することができるとしている。

欧州委員会は、「リストラクチャリングと雇用」に関する報告書の中で、リストラへの対応と欧州労使協議会の問題は密接に関連していると指摘する。EU労使団体に対しては、この2つの問題を合わせて取り扱い、1)リストラに関する指針を適用・監視する実施機構、2)リストラの成功事例の導入促進、3)変化に対応する主体として、欧州労使協議会のより効果的な運営とその成功事例の普及促進、4)訓練、労働移動、産業部門の側面、予測の観点などに関する共通政策――などについて意見を取りまとめるよう要請している。

参考

  • 欧州委員会ホームページ、欧州労使関係観測所オンライン(EIRO)

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