労働市場、失われた10年
ブラジル企画省所管の応用経済研究所はこのほど、1993年から2003年までの期間における社会情勢の変動を比較分析した「社会レーダー」と題する報告書を発表した。同報告書は国民の生活水準の低下、所得集中、貧困層の増加、労働市場の悪化などを浮き彫りにしている。また世界各国と比較して、ブラジルの悪化が早い速度で進んでいることも明らかにしている。
失業率は上昇の一途
失業率は、1993年の6.4%から2003年の10.0%へと3.6%上昇した。南米の平均失業率は同年比6.9%から8.0%という推移であり、ブラジルの失業率が他の南米諸国に比してより高率で上昇していることを示している。特に都市部の失業率は高く、州都だけを見ると、同期間に7%から13.9%へ増加した。過去20年間に及ぶ経済成長の停滞と、生産部門のリストラが進んだことが、失業増加の最大要因とみなされている。この期間に、経済のアングラ化と就労者の実質所得低下が大きく進んだ。就労者の平均収入は、1996年の754レアル(約251ドル)から、2003年の639レアル(約213ドル)まで低下している。
他方、就労者全体に占める非公式就労者の割合は1995年の44.7%が2003年は45.5%に増加した。正式登録しない就労者が増加するなど、労働環境が悪化する一方で、国民の平均寿命も伸びている。また社会保障制度に分担金を納付していなくても生活扶助の必要があることを証明すれば、男性は65歳、女性は60歳で年金を受給できるために、社会保障財政は年々厳しくなっていくことが予想される。社会保障財政を破綻させないためには、非公式就労を減らし公式就労を増やす努力が必要。報告書は非公式就労を減らす対策を盛り込んだ総合労働法の改正を提起している。
若年層の失業問題はより深刻
若年層の失業はより深刻。1995年と2003年のデータを比較すると、全就労者に占める15~19歳層の就労人口割合は57%から49%へ低下している。これは、若者の就労が困難となってきたことと、労働市場がより高い学歴や経験を要求するようになったために、若者が就職の時期を先延ばしにしていることが原因ではないかと見られている。
その一方で15~19歳の年齢層に占める失業率は10%台から20%台へと急上昇。15~19歳層の失業率はすでに28.1%に達している。他の年齢層より高い20~24歳層の失業率(19.8%)をさらに大きく上回っている。
本来、若者が労働市場への参入を遅らせれば、その分失業率は減少する。だが実際には若者の失業率は悪化の一途を辿っている。このことは10代の就労環境の厳しさを物語る事象といえよう。
注
- 海外委託調査員
参考
- 6月1日付O Estado de Sao Paulo
参考レート
- 1米ドル=111.57円(※みずほ銀行ウェブサイト
2005年7月5日現在)
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