介護サービス産業の発展と課題
統計によると、2004年の台湾の出生率は平均1.21パーセントで、家族の平均構成員がますます少なくなっている。その一方で、高齢者や身体的または精神的障害者人口は増加の一途をたどっている。台湾の高齢者(60歳以上)人口は2025年に総人口の20パーセントに達すると予想されている。このことは20年後には5人に1人が老人となることを意味する。
かつて、高齢者や障害者は家族によって介護されてきた。しかし、現在では、伝統的な家族の役割や機能が変化したことで、家族はもはやこのような重い負担を担うことができない。また、失業者もこれまでは家族が面倒を見る傾向があった。大都市で職を失った人は、田舎の実家に戻り農作業に従事したのである。しかし、台湾が世界貿易機構(WTO)加盟して以来、産業、就業構造が変わったことで、現在では郷里に帰ったとしても彼らが就くべき仕事はない。ましてや付加価値のつく仕事はないだろう。これらの人々は、現在では政府による社会福祉や介護サービス産業に頼ることになる。
しかし、政府による社会福祉も財政が悪化している今日、広範囲の責任を担うことが不可能となってきている。そこで経済建設委員会(Council for Economic Planning and Development, CEDP)は「介護産業開発計画」を起草した。
介護サービス産業確立の目的のひとつは、政府財政の負担を軽減し、福祉を民間に外注化によって、対象から外されてきた一定の社会的弱者グループへの福祉を補完することにある。
政府は、また、介護サービス産業の推進に加え、介護サービス労働者として高齢の失業者を雇用し活用することで失業問題の一部を解決することも狙いとしている。しかし、最近の調査によると、政府の補助に加え介護サービスを購入するために一定の金額を支払うことを厭わないのは、都市部の高齢者と障害者に限られている。農村部では大半がこれらのサービスは政府の福祉であると捉えていて、私費を追加して介護サービスを買うことには消極的である。その結果として、農村地域では民間による介護サービスを普及することはかなり困難を伴う。さらに、働く側を考えた場合、介護サービス従事者となるために自らの家事を放置する人もでてくるだろう。家族の機能や家族関係の質的変化への影響が懸念される。
介護サービス労働の要員としては、2つの供給源がある。ひとつは失業者または仕事のない人で、CEPDが採用したいと願っている人々である。もう一方のカテゴリーはボランティアで、一部は主婦や退職者である。
介護サービス従事者の給与または賃金については、実際に極めて低く、大半が時給で計算されている。基本的に、中央政府は、一人当たり時給180新台湾ドル(約5.7米ドル)を民間部門に支払っている。郡や市町村によって支払われる時給が異なるため、一定の不公平な扱いも生じている。また、介護サービス労働は人材の派遣状況によって左右されるため、雇用の安定につなげることは現状では極めて難しい。また、彼らには十分な福利厚生や業務手当も付かない。最近では、特定の介護サービス従事者たちの中で協同組合や専門職協会を設立するという動きもではじめている。
高齢者人口の増加と政府の財政負担を考慮すると、多くの先進工業国が直面しているのと同様に、介護サービス産業の推進が国民の生活の向上のために重要な課題となる。特に障害者へのサービスの推進については、制度設計の複雑さ、多様性、相互作用、調整、統合が要求されるため、現在の計画を実現するための良質な調査の実施と、現状の効果的な改善への取り組みが政府および関連グループにとって重要な任務となるであろう。
参考レート
- 1米ドル(USD)=108.11円(※みずほ銀行ウェブサイト
2005年6月6日現在)
2005年6月 台湾の記事一覧
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