2004年の政労使合意の下での団体交渉

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年6月

2004年11月、オランダ政府と労使団体は、障害保険、生涯休暇、早期退職に関する制度改革の進め方に加えて、2005年の厳格な賃金抑制について規定した政労使合意を締結した。合意内容には、賃上げに関する具体的な取り決めはなかったが、関係当事者は、極度に抑制させた姿勢を貫くべきであるとされた。ほとんど全ての労働協約が改定時期を迎える2005年は、政労使合意の真価が問われる年となっている。

労働検査官の2004年秋の報告によると、2004年の団体交渉による賃上げ率は、水準ベースで0.2%増、契約ベースで0.6%増となり、対前年度比2%ポイントの減少を記録した。農業、工業及び建設部門は、平均以上の賃上げを記録したのに対し、サービス部門では賃金が低下した。

2005年の初めに、労使団体は、団体交渉における要求内容を設定するための雇用条件に関する覚書を発表した。経済情勢を考慮し、オランダ労働組合連盟(FNV)は、全体で3%の賃上げを要求することとした。このうち1.25%が賃上げに、残りの1.75%が主要分野(育児、健康な職場環境、年金、雇用保障など)のうちのいくつかに振り向けられる。オランダキリスト教労働者全国連盟(CNV)は、賃上げ要求の上限を1.25%に設定するとともに、全ての交渉で育児手当の問題を取り上げるとした。

雇用条件に関する覚書の中で、オランダ産業経営者連盟(VNO-NCW)は、現行の年金協約を修正し、当初1年目の傷病手当を引き下げる取り決めを要求するとした。オランダ中小企業連盟(MKBオランダ)は、労働費用の抑制、就業率と生産性の改善を重視した。使用者団体もまた、0~0.5%の賃上げ率の上限を設定した。経営側の姿勢に対し、FNVは交渉における衝突を予測し、闘争資金を上限まで積み増した。使用者側は、FNVの3%の賃上げ要求に反対を表明した。政労使合意にもかかわらず、いくつかの分野に関しては、労使双方ともに頑な態度を崩さなかった。

2005年1月、社会問題雇用相は、2006年までは賃上げは実施すべきでなく、労働者は2005年の賃上げを期待してはならないと述べた。大臣は、2005年の厳しい団体交渉を予測した。これに対し労働側は、賃金は労使間で決定されるべきものであると反発を示した。

覚書から明らかなことは、労使それぞれで政労使合意に関する解釈が異なるということである。2005年の交渉においては、年金や育児手当など賃金以外の問題も重要な課題となっている。また、労働側は、教育訓練のためのボーナスや基金の設立を要求している。

いくつかの企業、産業では労使交渉が行われ、合意に達した。妥結内容は次のような結果であった。

  • ABN Amro金融グループの経営側とFNV、CNV傘下の組合及び銀行保険業の職業別組合は、利益分配を伴う雇用条件の合理化で合意した。この制度の適用を受ける労働者に対しては、10%の年収引き下げに続いて、向こう3年間で2度の一時金支払い、年1.67%の賃上げが実施される。
  • TPG Postの経営側とFNV、CNVに加盟する公務部門の組合は、2004年11月、利益に連動した500ユーロの一時金で合意した。
  • 350人を雇用する食品企業のVerstegenは、基本賃金の1%引き上げ、業績連動型の報酬制度にかえて、徐々に昇給していく制度に改め、労働者はより高い水準の賃金表を導入することで合意した。
  • FNV、CNV傘下の託児施設の労働組合と使用者は、2004年2月、産別枠組み協約に合意した。協約は、2005年の賃上げを0.75%、年末の一時金を1%としている。労使は、年金、育児、病気にかかる費用に関しても合意に達した。
  • 家具製造業中央労働組合、FNVの建設労組、CNVの森林建設労組は、家具製造業労働者2万2000人の賃金を2005年4月まで凍結することで合意した。

参考

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