社会保障制度が財政を圧迫

カテゴリー:労働条件・就業環境勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2005年6月

サンパウロ大学経済研究所は、ブラジルは世界で最も国民負担の大きい制度を維持しているという調査結果を出した。2002年の世銀と国内の公式データを用いて、GDPに占める社会保障制度の支出割合を比較し、結論づけている。社会保障院が維持している社会保障制度は、年金と福祉、医療制度からなるが、公務員を特別優遇する年金、高コストな疾病対応などで、不平等、非効率、根絶できない汚職等により経費は年々増大、政府財政を脅かしている。

同研究によると、女性60歳、男性65歳以上に対する政府の年金支払い義務と福祉による1人当りの平均支払い合計に、ブラジルは2002年に1万8,652ドルを投じているという。これはブラジルの1人当り所得7770ドルの1.4倍に当たる。このため、GDPに占める社会保障制度の支出は60カ国平均8.7%に対し、ブラジルは12.7%と高い。

制度そのものは高額の支出を要しているが、一般年金生活者の平均月額受給は2002年に444.26レアル(約148.09ドル)に過ぎない。保障院が支払う年金の51%の資金は、国民の10%に当る国内の裕福層が受け取っているとした批判もある。国会議員として退職すると平均1万968レアル(約3656ドル)、司法の判事の年金は平均月額1万9000レアル(約6333ドル)、さらに公務員は男性60歳、女性55歳と一般国民より5年早く退職でき、退職前の給料額をそのまま、終身受給できる公務員優遇制度など、偏った優遇制度に原因があるとした指摘だ。

こうして2003年は年間260億レアル(約86億6667万ドル)であった社会保障制度の赤字は2004年に327億レアル(約109億ドル)に膨らみ、2005年は400億レアル(約133億ドル)へ達すると予想されている。最低賃金以上の月給で正式雇用すると、賃金の約30%を労働者と企業は社会保障制度納付金として支払うよう、正式市場には負担をかけていながら、非公式市場は放置されている図式が続いている。

サンパウロ大学のジョゼ・パストレ教授は、就労している国民の60%に当る4800万人が非公式就労として社会保障分担金を納付していないのにもかかわらず、医療保護及び67歳になって生活費が不十分と証明できれば最低賃金分を政府が終身支払うといった生活保護の受給資格があり、これが制度の財政難を悪化させていると指摘している。

参考

  • Estado de Sao Paulo,May15

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