「安全な作業環境づくり」と労働政策

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  • 国別労働トピック:2005年5月

労工委員会(CLA)は労働政策の3つの優先事項を発表した。その中で最初の優先事項は2000年以来実施されている「安全な作業環境づくり」である。「労働安全衛生法(Labor Safety and Health Law )」の適用となる職場での労災死を4年で40%減少させることがこの政策の目標に設定された。

すなわち、初年度に15%、2年目に15%、3年目に5%、4年目に5%の削減を目標とする。CLAは、1997年から2000年まで4年間の労災死の平均が479件であったのに対し、2004年には304件となり、41.6%減少したと発表している。4年で40%削減という目標が達成されたことで、直接損失23億4000万新台湾ドルと間接経済損失116億新台湾ドルが節約となった。

目標達成の方法について、 CLA は、同委員会が次の3つの中核戦略を活用した「業績本位」管理原則を採用したことを強調する。その概要は、以下のとおり。

  1. 労働検査の強化

    主な戦略は、ハイリスクな職場の安全衛生について監督と検査の実施を強化することにある。これまで台湾北部、中部、南部ではすべてISOの認定を受けさせ、その検査管理情報は完全に電算化され、検査を効果を高める努力をしている。ハイリスクな職場の検査は実査により行われ、リスクレベルに応じて分類されている。

  2. 安全パートナーシップの確立

    主な戦略は建設業の労働災害を大幅減少することである。CLA は建設業の作業安全性を検査するため、特別作業部会を設置した。この作業部会は、全国的規模の精力的な検査を実施し、暫定的な移動検査の実施を目ざす検査制度を確立している。独立した検査・管理機構を支援するため、安全衛生の自主管理に関する大手建設会社向けセミナーが開催された。危険な建設に関する建設前検査基準を確立する「危険な建設現場検査の手引き(Dangerous Construction Worksites Inspection Manual)」が作成され、公布された。2004年、建設業の労災死は、1997年から2000年までの期間より40.9%減少して154件になった。

  3. 広報の強化

    主な戦略は、大企業の安全衛生の大幅な進歩を促進することである。CLA は、「安全プログラム」を強化し、台湾電力と台湾高速鉄道などの大企業との協力関係を築いた。また、CLA は災害防止措置を策定し、災害防止の重要性の推進を目指して、大企業の重役とマネージャーと共に安全に関するセミナーを開催した。一方、CLAは、自主管理の基盤を築く目的で、防衛部および交通部と協力して安全衛生に関するプログラムを推進した。2004年、大企業と大規模公共事業では48件の死亡があった。この数字は、1997年から2000までの期間より平均18件少なく、27.3%の減少である。

上記の戦略に加え、CLAは、最近、労働衛生規則(Labor Health Protection Rules)を改正し公布した。この規則は、主として、労働者を雇用する際の健康診断、既存労働者の定期健診、健康に害のある作業に従事する特別定期健康診断を実施するために使用者を規制する労働安全衛生法(Labor Safety Hygiene Law)第12条に基づくものである。現在のニーズを満たすべく、労働者の健康診断と医療衛生の施設および管理を改善するため、この規則は改正され、2005年2月18日発表された。改正点をまとめると次のようになる。

  • 健康に害のある特別作業の追加:クロム酸とそのナトリウム化合物、カドミウムとその化合物を含む、健康に害のある特別な作業に従事する労働者を保護するための特別健康診断と健康診断。

  • 企業が工業団地に設けた医療ユニットおよび産業集中区域に設けられた合同医療衛生ユニットでは、医師の確保が困難であった。この問題を考え、工業団地や産業集中区域での医療衛生ユニットの設置を医療機関に委託することを企業に認める条項を規則に加えると共に、医療ユニットの設置規則を緩和した。さらに、規則は、職業病防止の専門医の役割を強化するため、6,000人以上の労働者を雇用している企業では少なくとも1人以上の職業病医師をスタッフとして抱えなければならないことを定めている。

  • 国民健康保険(National Health Insurance)が定めた成人病予防健康診断規則に準拠して、医療リソースの浪費を防ぐために労働者の一般健康診断の期間が変更された。さらに、近年結核感染が増加してきたことに鑑み、労働者の健康を守り、職場での感染を防ぐため、回復期にある労働者の健康診断には胸部レントゲン(大型の写真)を含まなければならないという規則を追加した。

  • 労働者特別健康診断は当初3つの管理クラスに分類されていた。現在は職業による原因と明らかな異常を4つのカテゴリーに分類している。また、各管理クラスの内容は、労働衛生のフォローアップや労働衛生の促進および職業病報告のベースとして役立つように定められている。労働安全衛生法第13条に従って、健康診断で職業による原因により作業に不適当であることがわかった場合、使用者は、医学的配慮をする以外に、当該労働者の職場および職務を変更し、労働時間を短縮するなど、適切な措置を実施しなければならない。

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