OECD多国籍企業行動指針、5年ぶりの見直し
経済協力開発機構(OECD)は、9月21日、「OECD多国籍企業ガイドライン」の各国政府のコミットメントを強化するための見直し結果を発表した。
OECD多国籍企業ガイドラインは、加盟国および遵守宣言国の39カ国に、本社を持つか、あるいはその国で活動を行っている多国籍企業を対象とした企業行動原則で、1976年に発表されて以来、定期的に見直し改定作業が行われている。
同ガイドラインは、政府からの勧告という形で効力を発するものであり、法的拘束力を有するものではないが、その実施にあたっては、採択国のナショナル・コンタクト・ポイント(NCP)、「国際投資・多国籍企業委員会」(CIME)、「労働諮問委員会」(TUAC)、「産業諮問委員会」(BIAC)がガイドラインの周知を行うことで企業行動の規範としての役割を担っている。国内のガイドライン違反の労働紛争については、当該企業が労組、使用者団体と協議し、調整を行うことで主には解決するが、解決に至らない場合には、CIMEへ報告がなされ、OECD総会での審議にまで至るケースもある。
OECD多国籍企業ガイドラインの2000年6月の見直しの際には、ILO中核労働基準である強制労働、団結の自由、差別、児童労働の四分野をすべてカバーするよう検討が行われ、その内容がガイドラインに盛り込まれた。
2000年の改定以来5年目を迎える今年は、企業が「企業の社会的責任」を促進するために企業はどのように自社のCSRを設計し、実施を強化するのかを検討しつつ、ガイドラインがそのために有効となるよう政府の支援をさらに広げることを再確認した。
各国間のNCP間の相互作用と経験交流の一層の強化の必要性、メンバー国、非メンバー国を問わず、ビジネス、労働組合、NGO団体のパートナーシップも期待されていることーーなどが確認された。
OECD多国籍企業ガイドラインは、「企業の社会的責任(CSR)」の分野における唯一の政府が関与する規制である。人権、サプライチェーン・マネジメント、労使関係、環境、消費者保護、汚職の排除などの点に対して国際ビジネスにおいて唯一勧告というかたちで企業に自主規制を促すものである。OECDの発表によると、国際投資フローの87%、世界のトップ100企業のうち97企業がこのガイドラインの影響の下にある。ガイドラインの促進にむけ、加盟するするすべての政府は討議と調停のためのフォーラムとしての役割を担うNCPを設けている。
検討のための委員会は、今回の見直し作業を通じて同ガイドラインの運用の特徴を下記の4つのポイントにまとめ強調している。
- ビジネス倫理の具体的問題の調停のため、ガイドラインが必要とされる機会が増えている。労働組合、NGO、経営者から106件の調停のリクエストがあった。そのうち72件はNCPが何らかのアクションを起こしている。
- この動きは問題の解決とそれぞれの立場の理解促進のために貢献している。たとえば、ザンビアのコッパー鉱山の近辺住民の立退き問題では会社は住民の強制的立ち退きを撤退した。中央メキシコのタイヤ工場での派閥紛争では紛争による閉鎖の危機を回避させ労働者をサポートしたなど。
- 企業責任問題に対する政府の経営への働きかけのためのガイドラインの活用の増加。
輸出信用や投資保障のため39カ国のうち22カ国の政府は、ガイドラインを活用している。ガイドラインの促進と実施ため幾つかの国では、大使館をネットワークを活用している。 - 開発途上国にも利益をもたらしている。ガイドラインは、非加盟国の協力を統合し、国際投資の利益を十分に発揮し、投入資本をガイドラインのフォローアップに活用することで国際投資熱をさらに促進する。
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