最低賃金の引き上げ案、上院で可決、下院で否決

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

ブラジルの記事一覧

  • 国別労働トピック:2005年10月

政府が政治スキャンダルの対応に追われている間に、上院は最低賃金の引き上げを可決させたが、政府は下院審議で否決に持ち込む工作を行い、否決させることに成功した。

上院では引き上げ可決

上院は最低賃金を現在の300レアル(約1万3200円)から、384.29レアル(約1万6909円)へ引き上げる追加修正案を、30対27票、棄権5票で可決した。2005年5月1日から改定された最低賃金は、可能な限り引き上げようとする野党や労組側と、国家予算を考慮して小幅な引き上げに止めたい政府の意見が合わず,政府は暫定措置により、300レアルにして支払い、暫定措置の国会承認を待っていた。野党は上院でこの暫定措置の修正案として、384.29レアルへ引き上げる案を提出し、可決したものである。

下院で否決に成功

しかしながら政府は、この修正案を下院審議で否決に持ち込む工作を行ない、下院で否決させることに成功した。もし下院も384.29レアル案が可決すれば、大統領権限で、384.29レアルを拒否するとも発表していたが、この追加修正案は政府にとって政治的には打撃となり得る要素を持つ。

労働党は設立以来、最低賃金引き上げを重要政治公約に掲げており、大統領選挙時は、任期4年で2倍に引き上げることを公約していた。しかし政権を握ると同時に、政府は財政再建を優先、最低賃金調整抑制路線に転換させた。他方、就任したばかりのマリニョ労相は、労相就任を引き受けた時に、自分の労働行政は、最低賃金を適切な水準に引き上げることを目標にすると発表し、政府の財政担当大臣を憂慮させた。

今回は上院で成立した引き上げ案を下院で政府が否決させたが、そのために政府は否決に賛成する与野党議員たちの出身地や、議員が関連するプロジェクト工事へ10億レアル(約440億円)以上の国家予算を支出して、反対票を得たとの報道もある。野党としては、最低賃金が、下院で通過した場合でも、大統領が拒否権を発動して、384.29レアル案を実施しない事は計算に入れた上で、上院で採決した引き上げを大統領が拒否したという政治的成果を狙ったとの見方もある。

関連情報