AFL-CIO分裂のその後
1.UNITE-HEREがAFL-CIOから正式脱退
AFL-CIO (アメリカ労働総同盟・産別会議)からの脱退を巡り、その去就が注目されていたUNITE-HERE(縫製・繊維労組・ホテル・レストラン従業員組合、組合員数45万人)は、9月13日、拡大執行委員会を開きAFL-CIOからの脱退を全会一致で決定し、翌14日、正式に脱退を表明した。この結果AFL-CIOから脱退した組合は、SEIU(国際サービス従業員労働組合)、チームスターズ、UFCW(国際食品・商業労働組合)と合わせ、計4組合となった。UNITE-HEREは、SEIU等が中心となって結成したCWC(勝利のための変革連合、Change to Win Coalition)への参加を表明している。
今後、UNITE-HEREはCWCとともに移民労働者に重点を置いた組織化を更に強化し、予算の50%以上を組織化に投じるとしている。対するAFL-CIOはUNITE-HEREの脱退について、「労働組合の結束が最も必要な時に脱退するのは大きな誤りである」と述べている。
UNITE-HEREの今回の選択の背景には、8月末に米国南部を直撃したハリケーン・カトリーナによる影響もあるされる。UNITE-HEREの関係者は、「ハリケーン・カトリーナの最も深刻な被害者は低賃金労働者であり、無力な彼らの組織化が、今最も必要な事と再認識した」と述べた。
2.SEIUとAFSCMEが不可侵協定で合意
AFL-CIO内最大の組合であるアメリカ州郡自治体従業員組合連合(AFSCME、組合員数140万人)とAFL-CIO脱退派の中の最大組合であるSEIU(組合員数180万人)は、9月19日、相互の組織化活動を妨げないとする2年間の相互不可侵協定に合意した。公務員を主な構成員とするAFSCMEと、医療従事者、清掃労働者、警備員などを組合員に持つSEIUは、どちらも非常に積極的に新規組合員の獲得に取り組む組合として知られる。
SEIU は過去数カ月、AFSCMEに代表されるカリフォルニア州の医療従事者の引き抜きを画策し、両組合間で深刻な争いが生じていた。今回SEIUとAFSCMEは、カリフォルニア自宅介護労働者組合AFSCME/SEIUを新たに設立し、カリフォルニア州の2万5000人の自宅介護労働者を共同で代表することで合意した(注1)。また、AFSCMEとSEIUはカリフォルニア州とペンシルヴァニア州における自宅保育労働者の組織化にも共同で取り組むことを決定した。
AFL-CIOの分裂に際しては、組織化への取り組みが大きな争点の一つであった。脱退派、残留派ともに組織化に力を注いでおり、分裂後、組合員の奪い合いが起きるのではないかとの懸念が高まっていたが、今回の合意は、分裂により生じた亀裂を修復する動きとも取れる。
注
- 労働組合の結成について規定する全国労使関係法(NLRA)は、排他的交渉単位制度を採用しており、その交渉単位に属する労働者の選択により選ばれた一つの労働組合がその交渉単位の労働者を代表して使用者と交渉する仕組みとなっている。複数の労働組合が、代表することはない。
参考
- 委託調査員レポート、9月14日付ニューヨークタイムス、9月20日付ニューヨークタイムス、9月20日付ウォールストリートジャーナル
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