ハンガリー:独ボッシュ社の進出と雇用創出

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2005年1月

ハンガリーはEU(欧州連合)に2004年5月に加盟し、外国企業の投資先として注目されている。ドイツの自動車部品大手であるロバート・ボッシュ社をはじめとするボッシュ・グループは、ハンガリーにおける製品生産能力を精力的に拡張しつつある。

相次ぐ進出と雇用創出

昨年8月、ロバート・ボッシュ社はメカトロニクスの研究・開発に取り組むため、ミシュコルツ大学に新たにメカトロニクス学部を設置する契約を大学と交わした。同学部の卒業生の多くは同社に採用される予定である。続いて11月にはミシュコルツに工場を開設し、500人を雇用した。これに伴うサプライ・チェーン企業への波及効果により、2千人の追加的な雇用創出も見込まれている。さらに、自動車用電子制御システムの生産をドイツ、フランス及びスペインからブダペスト東部のハトバンの工場に移転させる計画も進めている。そのために行われていた同工場の拡張工事は12月に完了した。ハトバン工場への生産移転は段階的に行われ、2006年までに2000人の新規採用が予定されている。

このほか、ボッシュ・グループの産業機器メーカーであるボッシュ・レックスロス社も、北東部の都市エゲルに工場の新設を予定していると報じられた。

労働力の質の高さが投資の理由

ハンガリー政府はボッシュ社に対して新たな投資促進制度を適用し、総投資額の10%を補助する方針である。しかしロバート・ボッシュ社の広報担当ロベルト・ラヴェツキー氏は、補助金が利用できることだけが投資の理由ではないと語った。「労働力の柔軟性、インフラと輸送設備が発達していること、大手の自動車メーカーの存在、これらがいずれも重要な決定要因となった。」と同氏は述べた。

またボッシュ・レックスロス社の管理部長ラヨス・グレディンガー氏は、ボッシュ・グループのハンガリーにおける販売・生産額が2003年には2億6500万ユーロに上ったことを明らかにした。同氏はグループのハンガリー投資の動機を問われたのに対し、「労働者がよく訓練されていること」を最も重要な理由としてあげた。さらに、ボッシュ社のハンガリー工場における労働力の質は、スウェーデン、フランス、ドイツなど西欧の工場に劣らないと付け加えた。

今後の動向

2004年11月に発表された欧州委員会の「競争力レポート」は西欧の自動車産業についてとりあげ、西欧企業が競争力を強化するためには労働コストの低い東欧各国、とりわけハンガリー、ポーランド、チェコ共和国に生産機能を移転させることがこれまで以上に必要になるだろうと指摘している。ハンガリーへの西欧企業の進出がどこまで進むのか、それがハンガリー国内の労働市場にどのように影響していくのか、注目される。

参考

  • European Employment Observatory, November 2004
  • Bulletin Quotidien Europe, No.8838
  • NNA Business Mail

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